ファーストインプレッション『LA-MULANA』
Posted on 2012年7月29日日曜日
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画面写真のアスペクト比が正常ではなかったため、アスペクト比を修正して差し替えた
先月リリースされたPC版『LA-MULANA』がおもしろい。
・・・・・・のだが、クリアまではまだまだ時間がかかりそうである。レビューはクリアしてから書くというのが私の基本スタンスとはいえ、このままでは旬の時期を逃してしまうので、ファーストインプレッションとして現段階での『LA-MULANA』の評価を綴ってみたい。
ファーストインプレッションということで、リリースに至るまでの経緯や開発チームの情報といったものは省略した。また、プレイ途中であるために最終的な評価が覆る可能性もあるのは留意してほしい。
なお、プレイ時間はゲーム内時計で5時間程度だが、リトライが多く、これは正確ではない。体感的には、10時間程度だと思われる。
『LA-MULANA』ってどんなゲーム
本作は『メトロイド』や『悪魔城ドラキュラ』シリーズに代表される、フィールド探索型の2Dアクションゲーム。フィールドを行き来して謎を解き、プレイヤーの能力を徐々にアップグレードさせて探索範囲を広げていくというゲームだ *1 。*1 海外では、2つの代表作から名をとって「Metroidvania」と呼んだりする
『スーパーマリオ』シリーズのようなシームレスに画面がスクロールする方式ではなく、画面端に行くと隣接するエリアに画面がスクロールする方式を取っている。画面構成は異なるが、2Dの『ゼルダの伝説』シリーズを想像すればわかりやすいだろう。
主人公は考古学者のルエミーザ博士。彼を操り、タイトルにもなっている巨大な古代遺跡「LA-MULANA(ラ・ムラーナ)」の謎を解くのが、本作の主な目的だ。
古代遺跡と言えばまっさきに思い浮かべる人も多いであろう、ピラミッド |
http://la-mulana.com/
PLAYSIMで1200円で購入可能
PLAYISM「LA-MULANA」
http://www.playism.jp/games/lamulana/
雰囲気とマッチした探索、そして謎解きが秀逸
同ジャンルの始祖とも言うべき、『メトロイド』や『悪魔城ドラキュラ』より秀でていると感じたのが、『LA-MULANA』の探索と謎解きのおもしろさである。先達である両シリーズは、プレイヤーの持つ探索能力の拡張に比重が置かれている。2段ジャンプができるようになって高所に登れるようになるとか、特定のオブジェクトを破壊できるようになって探索エリアが広がるといったものが、例として挙げられる。
一方の『LA-MULANA』は、プレイヤーの洞察力や推理力といった部分に比重が置かれている。主な解法を列挙してみよう。
- オブジェクトを叩いて壊す
- 一見、進めないように見える場所に足を踏み入れる
- 台におもりを置いて、仕掛けを作動させる
- ブロックを特定の床に移動させる
怪しいオブジェクトを見つけるのも、進めないように見えて進める場所を見つけるのもプレイヤー自身の力によるところが大きいのだ。それでいてヒントはちゃんとゲーム内に提示されており、気をつけていれば怪しい部分がわかるようになっている、という点が非常に素晴らしい。
謎解きには画面から怪しい部分を見つけるようなもののほかに、フィールド内に点在する石碑に書かれたメッセージがヒントになっているものも多数存在する。
例えばゲーム序盤で発見できるメッセージに次のようなものがある。
白き箱を押す者よ。さすがにこれはわかると思うので答えを書いてしまうが、これは先に挙げた「ブロックを特定の床に移動させる」というもの(『ゼルダの伝説』とかでよくある)を示したものだ。
白き床は白き箱とひかれあう。
白い床に白いブロックが乗ると、ブロックの中心部が赤く点灯する |
石碑(画面右側)のほか、白骨死体(画面中央下部)を調べてもヒントが得られる |
ヒントをくれる少女ムーブルグ。語り口がいちいちかわいらしい |
公式ガイドブックでは「遺跡探索考古学アクション」という言葉が使われているが、この言葉に一切偽りはない。あるとすれば冒険劇である点が抜けていることだろう。したがって私は「遺跡探索考古学アクションアドベンチャー」とするのが、くどいながらも妥当だと思う。
ちなみに謎が解けなければ一生そこで詰まる、という危険性を多分にはらんでいるのも先輩作品と同様である。
高難易の意味するところ――それはビターな味わいか、はたまた毒か
開発チーム自らが口にするように本作は難しい。高難易度の主要因は、以下の2点である。- ジャンプ軌道
- ライフ管理
このような仕様は昨今まったくといっていいほど見かけないが、かつての名作2Dアクション『魔界村』シリーズが同様のジャンプシステムを採用している。
この仕様によって、1回のジャンプの重みが想像以上に大きい。慣れるまでは、とにかくこれが文字通りプレイヤーの足枷となるだろう。
水中での操作はさらに難易度が上昇する |
このため、ダメージの蓄積がのちのちに与える影響がかなり大きい。「ボス戦にたどり着くまでに瀕死になっていた」のでは、ボスに瞬殺されてしまうのがオチだ。特にライフの総量が少ない序盤はこの傾向が顕著となっている。
なかには炎の噴き出るような場所も。罠の類は総じてダメージが大きい |
地上などにある温泉を使えば、ライフはすぐに全回復できるのだが…… |
私は好きだ。
そしてこの仕様が嫌いな人に『LA-MULANA』は向かない。
これだけである。
本作はこの仕様に合わせて作られている。侵入者の命を絡めとる数多の罠、離れた足場までの距離、雑魚の動きからボスの攻撃パターンに至るまで、おおよそほとんどのレベルデザインがピタリとこれに当てはめて作られているのだ。それは一種の美しさを秘めているとさえ言える。
こういったシステムを取っている(主に古い)高難易度のゲームはワンミスで、何度も同じことをさせる場面が少なくない。過去の『ロックマン』シリーズにおける垂直に登っていくステージなどが最たる例として挙げられる。
もちろん、『LA-MULANA』にもそういった面がないわけではない。その一方で「私が単に難易度を高めるならこうするな」という部分はそうなっていないことが多く驚かされる。きっとあえてそうしていないのだと思う。ルームガーター、ガーディアンといった中ボスやボス格の敵までの道のりも、決して短いものではないが、長すぎるというわけでもない。
このような安易な難易度上昇を避けた丁寧なレベルデザインは、まさにエレガントと形容するべき内容である。
ボスはパターンを見つけて、それにハメるような趣が強い そういったものが苦手なプレイヤーは合わないかもしれない |
バランスが悪いかな、と思うところ
ちょっと熱が入ってしまったが、気になる点がないわけではない。美点に比べれば些細なことだと認識しているので、列挙するのに留める。- 入手すべきなのに、明らかに入手できていないアイテムがある
- 地上に戻ってのライフ全回復が面倒(温泉が近ければよかった)
- サブウェポンの弾が購入しないとほとんど手に入らない
- 序盤の難易度の高さ *2
※2012年10月19日追記
ずいぶんと記述が遅れてしまったが、下記の問題点は最初のバージョンのみのもので、すでにアップデートにて解決済みである。
まとめ
『LA-MULANA』は、開発者からの正々堂々とした挑戦状だ。遺跡にはたくさんの罠が待ち構え、頭を悩ます謎解きがいくつも存在する。しかし、ゲーム中にはちゃんと手がかりが散りばめられており、解いてみれば納得いくものばかりだ。己の観察眼、推理力、アクションゲームのスキル。これらが一体となって、初めて彼らとの戦いの舞台に立てる。いずれもが欠けてはならないが、すべてを結集して「LA-MULANA」を踏破したときがプレイヤーの勝利である。そうすれば開発からの惜しみない賛辞も期待できよう、というものだ。
近年稀に見る、開発者との崇高な戦いの舞台、それが『LA-MULANA』である。「正面切って開発者と戦うなら、本作をおいてほかにはない」と結論づけてもあながち間違いではあるまい。