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センス・オブ・ワンダー・ナイト 2012 雑感

Posted on 2012年9月30日日曜日 | No Comments

独創的なゲームを発掘するゲームプレゼンイベント、「センス・オブ・ワンダー ナイト 2012(SOWN 2012)」について、足早に紹介するよ!

センス・オブ・ワンダー・ナイトって?

公式サイトより抜粋してみよう。
ゲーム開発者にスポットライトを当て、“見た瞬間、コンセプトを聞いた瞬間に、誰もがはっと、自分の世界が何か変わるような感覚”=「センス・オブ・ワンダー」を引き起こすようなゲームのアイデアを発掘し、東京ゲームショウ2012の会期中にプレゼンテーションの機会を提供する企画で、今年で5回目の開催となります。
さらにイベントの目的。
  • 実験的であり、創造的であり、伝統的と呼ばれないゲームデザインやアイデアを含んだゲームを紹介すること
  • 「センス・オブ・ワンダー」を感じられるゲームが作られることの重要性を紹介し、それにより、ゲーム産業の活性化を図ること
  • 実験的なゲームを開発している人たちに、将来へのチャンスの場を提供すること
  • ゲームデザインに新しい領域を作り出していくこと
つまるところ「今まで見たこともない、プレイしたこともないような、斬新、画期的、革新的なゲームを見つけようぜ!」ってイベントである。

イベントの模様はUstreamで配信され、2011年のものはYouTubeにも動画があげられたりしている。実は「ここから商業化にこぎつけたんじゃないの?」ってゲームもあったりする(いや逆なんだろうな、きっと。商業化が決まってて発表する場が与えられたという感じ。『Unfinished Swan』とか『ゴミ箱』あたりね)。

Ustream「TGS 2012 Sense of Wonder Night」
http://www.ustream.tv/recorded/25571142
※170分と長い

センス・オブ・ワンダー・ナイト 2012公式サイト
http://expo.nikkeibp.co.jp/tgs/2012/business/sown/index.html

※2012年10月17日追記
NAVERまとめ「Links of SENSE OF WONDER NIGHT 2012 10 Presenters」(関連リンク集)
http://matome.naver.jp/odai/2134705119278730501

SOWN 2012のプレゼン作品の紹介

毎度前置きが長くなるのが私の悪い癖なので、本題に移ろう。

以下が、プレゼンされた4カテゴリ全10作品である(掲載は発表順にならった)。

だれかこれを説明して Someone please explain about it
どんなものだが見てみたい Want to see what kind of thing
クールな既存ゲームの再定義 Cool re-definition of traditional style
とてつもなく奇妙で美しい Absurdly strange and beautiful
※タイトルクリックで、この記事内の該当部分へとジャンプ

『Grandmaster(開発:Beast Mode)』 動画 0:24:50~

乞食となってモノあさりする、という風変わりなゲーム。ウクライナ産。

タブレット端末向けに開発されているようで、画面をスワイプしてゴミ箱の中を引っ掻き回し(アイテムを移動させ)、食べ物を探すというゲームらしい。ゲームの合間には、食べ物を横取りしようとやってくるほかの乞食や警官を撃退するというカオスなイベントも。

プレイヤーの着せ替え可。

キャラクターデザインのセンスといい、実に個性的である。プレゼンでは最終的に乞食を題材にした歌を歌って、会場をわかせた。その影響もあってか、オーディエンス賞とNHN Japan賞を受賞*1 。Facebook上では、受賞について「Audiencu Awardu! NHN Awardu! Sugoi!」とポストしており、私を和ませた。

*1 選考段階で一度もれたところを、NHN Japanの強い要望で選考に残したとの発言もある

Facebook『Grandmaster』
http://www.facebook.com/grandmaster.game

『ちゅまむ(開発:い~といん)』 動画 0:39:10~

日本産のパズルアクションゲーム。2台のiPhoneを使って遊ぶ。画面上を移動するキャラクターが2台の端末間を移動するというのがメインのゲームメカニック。

ゲームは2台の端末上で動作し、ランダム生成されたルートを2人のキャラクターがオートで移動している。プレイヤーは2台の端末に表示されたルートがつながるように端末を並べ、その状態で画面をピンチ(つまむ*2)することで、ルートを接続してキャラクターを誘導していく。

*2 ゲームタイトルはここからとったものだろう

スコアは、ルート上のボーナスポイントの通過回数×キャラクターがすれちがった回数(ランデブーと呼ぶ)で算出される。

タッチデバイスお得意のイチャイチャできるゲームメカニックで、とても興味深い。審査員からも「操作について特許申請したほうがいいよ」と言われていたのが印象的だった。受賞はなかったものの、プレイするか(する相手がいるか)どうかは別として個人的には結構好きなタイトル。GREE賞を受賞した。

『BREAKS(開発:なんも)』 動画 0:47:45~

タッチデバイスを想定した開発中の作品。リリース時期やプラットフォームは未定。日本産。円形のステージ上にブロックが現れるので、自機となっているボールをスワイプ操作で動かし、ブロックにぶつけて破壊するという内容だ。

最大の特徴は、状況に応じてBGMにエフェクトがかかるようになっていること。プレイするたびに異なる体験になるようだ。ゲームプレイをパフォーマンスという方向に持っていくことを目指しており、その結果としてプレイヤー自身がクリエイターになれるのではないか、ということを開発者は考えているそうだ。リプレイ記録と再生、及びWeb形式での書き出しを実装済みといかにも近代的な仕様が入っているのは素晴らしい。

コンセプトはとても興味深いのだが、残念ながら動画ではどこまで可能性があるのかわからなかった。

『BREAKS』公式サイト
http://fullpowersideattack.com/

『光弾の射手 The Light Shooter(開発:安本匡佑)』 動画 0:59:50~

東京工科大学の助教授が開発しているゲーム。開発している安本氏は、メディアアート、ゲーム、バランスボールインターフェイスなどの研究者で、本作は身体意識をテーマにしている。独自の電子弓デバイス「電子弓弐式_一葉」を使った一人称視点のシューティングゲームとなる。銃を撃つ代わりに、弓を射るガンシューティングを想像してもらうとわかりやすい。

画面は暗闇なのだが、弓を引くことで狙っている方向にのみ光が当たるようになっている。弦を放つと光弾が飛んでいき、光弾でターゲットを破壊するというゲームだ。

当初はブロックを撃つゲームだったのだが、東京ゲームショウでの出展に際して(SOWN 2012以外にも東京工科大学のブースにて出展していた)「妖怪とかを撃つゲームにしてほしい」という天の声(大学側の声だろう)があり、ダサくなりそうで嫌だったので違う方向に作り替えたそうだ。

この作り替えたあとの画面構成がおもしろい。暗闇に白点と白線だけですべての情報を表すというスタイルなのだが、敵は単なる点の集合ながらきちんと人型のターゲットが動いているように見える。それまで安元氏がひとりで研究していたのを、バイオロジカルモーションという別の研究者の技術を用いて実装しているとのこと。

Kinectが関係してそうだが、プレゼン中にはKinectという言葉は登場しなかった。なお、日本マイクロソフト賞を受賞している。

『TAISO(開発:雑魚雑魚)』 動画 1:10:30~

スマートフォンを体操選手に見立て、実際にスマートフォンを回したり投げたりして操作する体操ゲーム。以上。バカバカしいコンセプトをマジメに実装した、清々しいまでのバカゲーである。無料。

開発の雑魚雑魚(日本)は、去年に続いての登場。昨年に続き、GMOインターネット賞を受賞した。プレゼンが結構長いが、ゲーム同様おふざけしている部分が多く個人的には楽しめた。とはいえ、そのプレゼンは人を選ぶかとは思う。

App Store『TAISO』
http://itunes.apple.com/jp/app/taiso/id527515884
Google Play『TAISO』
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.zacozaco.taiso2

『Douse(開発:DigiPen Team Terrabyte)』 動画 1:32:25~

ゲーム教育の名門DigiPen Institute of Technology(アメリカ)の学生チームが手がけた作品。

主人公は天から降りてきた水の妖精*3。雨を降らせる力を使って、ステージ上の仕掛けを解いていながら進んで、天に戻るという横スクロールアクション。いわゆるプラットフォーマーである。今回プレゼンされたゲームのなかではいちばん既存のゲームに近いかな。公式サイトからダウンロード可能で、無料でプレイできる。

*3 タイトルにもなっている「douse」は「水を浴びせる」という意味

内容的にもシンプルそのものといった感じ。ステージ上の任意の地点に雨を降らせることで、枯れた植物に花を咲かせることができ、極一部で雨を使ったステージ攻略用のギミックがあるようだ。SEはいいけど、イマイチのめり込めなかった。

『Dous』公式サイト
http://douse.nfshost.com/

『Backworlds(開発:Anders Ekermo & Juha Kangas)』 動画 1:44:50~

スウェーデンのデベロッパが開発する2Dパズルアクション。今回、プレゼンされたなかでは私が唯一プレイしたことのあるゲームである。

『Backworlds』では表と裏の2つの世界が同時に存在しており、プレイヤーはドラッグすることで裏世界を表出させたり、逆に表世界を隠したりすることができる。これを使うと、裏世界の足場を出現させることで、表世界だけでは届かないような足場へと移動するといったようなことが可能になり、それが本作の基本的なテクニックとなる。

今回のプレゼンテーションのバージョンは、以前公開されいたデモよりもさらに開発が進んだもののようだ。もともとあった2つの世界を描き出すメインのゲームメカニック、それに重力反転床に加え、新たに時間を止めるギミックが採用されていた。動画で見ただけなのではっきりとはわからないが、ドラッグした範囲の時間を停止させることができるようだった。

正直、前にデモをクリアしたときは「おもしろそうだけど、微妙かも」という印象だったのだが、新たなギミックによってさらに豊かなゲーム体験を可能にしているようで期待が持てる。

なお、デモ版だとプレゼンでは出てこないボス戦もプレイできるはずである。

『Backworlds』公式サイト
http://www.backworlds.com/

『BaraBariBall(開発:Strange Flavor)』 動画 1:54:50~

8bitライクなビジュアルの対戦型アクションゲーム。アメリカ産。

ルールは簡単。アリーナ上に出現するボールを相手プレイヤーと奪い合い、画面下部にある自キャラクターと同じ色のエリアにボールを落とすというゲーム。ポイント制となっており、時間内により多くのポイントを得たほうが勝者となるようだ。

手にしたボールを投げることはもちろん、複数回のジャンプや空中ダッシュ、相手を近接攻撃で殴ってボールを奪ったりできる。1体1の対戦のほか、2対2のチームプレイにも対応している模様。

ボールが画面下に落下したときのエフェクトが『大乱闘スマッシュブラザーズ』っぽい。また、足場への復帰ジャンプやへりへの掴まり、無敵不可のローリングなど随所からスマブラの香りがする。

『BaraBariBall』公式ブログ
http://bbb.strangeflavor.net/

『Memory of a Broken Dimension(開発:xra)』 動画 2:09:25~

アメリカ産の一人称視点アクションアドベンチャーっぽい(?)ゲーム。これは言語化が難しい。というかプレゼン見ても、どんなゲームなのかよくわからなかった。特定のコマンドラインを入力することで、ステージが生成され、ステージを行き来するようなゲームのようだった。

ただわからないながらも、いかにもセンスの塊といった感じのビジュアルデザインはそれだけで興味関心を惹かれた。

『Memory of a Broken Dimension』公式サイト
http://dev.datatragedy.com/projects/moabd/

『Tengami(開発:Nyamyam)』 動画 2:22:00~

イギリス、ドイツ、日本と複数の国のクリエイターで手がけていた和物アドベンチャー。『Superbrothers: Sword & Sworcery EP(邦題:スキタイのムスメ)』みたいなゲームかな。

飛び出す絵本の世界を冒険するようなゲームで、絵本のなかを行き来し、隠された謎を解きながら進めていくような内容になっている。謎解きや場面転換のエフェクトなどに飛び出す絵本のような仕掛けがほどこされており、プレイ感覚もなかなか独特なのではないかな、といった印象。

和紙のようなテクスチャ、出雲大社を参考にして作られた建造物、四季の移り変わりやサウンド面など日本の文化の影響を色濃く受けているのが伺える。

驚いたのは、アートワークを実際に印刷すると絵本にすることもできるということ。どこまで現実的に可能なのかはゲームの完成までは疑問が残るものの、素晴らしい試みだと感じた。

アストラルゲートさんとこで前に記事があがってたので、詳しくはそちらを見てみるとよいかも。また、GameBusiness.jpでは開発者へのインタビューも行なっている。こちらは読み応えがあって、かつ開発者の熱い思いも聞けるので是非。

アストラルゲート「古代日本を舞台にした、イギリス製アドベンチャー『TENGAMI』に惹かれる」
http://astral-gate.com/indiegamenews/2504/
GameBusines「【TGS 2012】Youtubeの動画を見てひらめいた・・・『TENGAMI』開発者特別インタビュー」
http://www.gamebusiness.jp/article.php?id=6853

『TENGAMI』公式サイト
http://nyamyam.com/games

まとめ

今まで以上に、(いい意味で)既存のゲームの枠組みから外れるような作品が多かったな、という印象。デバイスの普及が大きいんだろうね。あとへんてこりんなピコピコデバイスを拍手代わりとするシステムは、相変わらず秀逸だと思う。

プレゼン時間はもう少し明確にされていてもよかったように思っていて、その点は次回以降は改善してほしい。あとは未だにイベントとしての箔の弱さもどうにかするべきじゃないのか、という気がしなくもない。そのためにはより多くの作品が集まるべきで、知名度が必要だと思うんだが、予算があまりおりないようで*4賞金なども準備されてないというのが実情のようだ*5。インディーゲームがずっと右肩上がりとは思えないが、頑張ってほしいところである。

*4 協賛も安定していない。Microsoft(あるいはXNA)とかSonyは、協賛してたりしていなかったり。任天堂のみが唯一毎年協賛している。Unityはこの手のイベントの協賛に積極的なので、今後も協賛には名を連ねると思われる
*5 ただしファイナリストは、協賛のUnityからUnity PROがプレゼントされている

個人的に気になったのは、『BaraBariBall』、『TENGAMI』、『Memory of a Broken Dimension』の3つ。『BaraBariBall』はシンプルな操作(十字ボタンと2ボタン)と見た目に反して、なかなかいろいろなアクションが入っていてよさげ。『TENGAMI』は言わずもがな、世界観の勝利。そして世界観の勝利という点においては『Memory of a Broken Dimension』の尖った雰囲気も捨てがたい、といったところ。

最後に。

SOWN 2009ファイナリスト『ANTI CHANMBER(当時は『Hazard — The Journey Of Life』)』の開発Alexander Bruceからのビデオメッセージが印象的(動画では0:12:30~)だったので、そちらを引用して本稿の締めくくりとしたい。引用中の太字はスライドの原文に合わせたものだが、日本語訳部分は太字になっていない部分があったので、私が太字にしている部分もある。
<原文>

I was not selected for SOWN in 2009, I would not be an independent developer today.

I would be working in an office somewhere, and would have never traveled outside Australia.

The peopele I met at TGS 2009 and

the experience of being in Japan changed entire direction of my career.

For the presenters: Meet as many people at the conference as you can. I am where Iam because of the people I met who helped me along the way.

And for the audience: Keep an open mind. Many experiments lead nowhere, but others inspire people to try new things, and occasionally. some experiments change our industry entirely.


<訳文>

もし、2009年のSOWNに選ばれてなかったら、今、インディ開発者になっていなかっただろう。 
どこかのオフィスで働いていて、オーストラリアから外に出かけることも決してなかった。

東京ゲームショウ2009で出会った人たちや、日本での経験は私の人生の方向をすべて変えた。

プレゼンターの人たちは、できる限りこのカンファレンスで多くの人に会ってほしい。なぜなら、出会った人たちは、今後の道のりのなかで、助けてくれる人たちになってくれるからだ。

そして、聴衆のひとたちには、広い心でいてほしい。多くの「実験」は何もならないかもしれない。だけど、誰かが新しいことに挑戦しようとすることからインスパイアされることがあると思うはずだ。そして、時には、いくつかの「実験」は、私たちの産業を完全に変えてしまうのだから。

素敵。来年もあるといいね、SOWN。

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