> > インディーゲームの小棚:Shelf#04『ATUM』

インディーゲームの小棚:Shelf#04『ATUM』

Posted on 2013年2月20日水曜日 | No Comments

「あ、これはブログで詳しく書きたいゲームだな」と思ってTwitterでのツイートは控えめにしたのに、結局、ブログでは触れることなく終わってしまうという失敗が多い筆者がお送りする「インディーゲームの小棚」第4回は、オランダの学生作品『ATUM』を紹介する。本作は、ゲーム外からゲームに干渉するという未来っぽいコンセプトを持った2Dプラットフォーマー。そんな『ATUM』も、昨年秋にあとで紹介しようと思って、最終的にはほっぽり出してしまったタイトルのひとつ。今年はこういうタイトルを減らしていきたい。

※本連載「インディーゲームの小棚」は、4Gamerで連載されている「インディーズゲームの小部屋」のタイトルとコンセプトを真似たものですが、「インディーズゲームの小部屋」との関連は(私が一方的にファンであるというだけで)一切ございません。

4Gamer - インディーズゲームの小部屋
http://www.4gamer.net/words/001/W00176/

『ATUM』は2Dプラットフォーマーだと説明したのだが、主人公の一人称視点でゲームが始まる。自室らしきところに入ってきた主人公は、部屋にあるPCの前へと移動し、そのPCでゲームをプレイするのである。つまり、本作はゲームをプレイする人になるゲームなのだ*1

*1 イギリスのゲームブログメディアRock, Paper, Shotgunでは、本作を「First-Person Platformer-er(一人称視点のプラットフォーマープレイゲーム)」と形容している

Rock, Paper, Shotgun - First-Person Platformer-er: Atum
http://www.rockpapershotgun.com/2012/10/26/first-person-platformer-er-atum/

世界観は、多数の古典SF作品から影響を受けているとのことで、開発は『ブレードランナー(原題:Blade runner)*2』やPhilip K. Dick'sの『火星のタイム・スリップ(原題:Martian Time-Slip)』などを挙げている。

*2 『ブレードランナー』自体も、Philip K. Dick'sの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(原題:Do Androids Dream of Electric Sheep?)』が元になっており、かなり彼の作品に強い思い入れがあるのかもしれない

WSADかカーソルキーでキャラクターを移動、上要素(W or ↑)かスペースキーでジャンプというのが基本的な操作。本作のゲームプレイがユニークなのは、マウス操作をすることでPC内の2Dゲームをプレイしている(一人称視点の)主人公の視点を動かし、PCの周囲にあるオブジェクトに触ったりできることだ。
視点を下げれば、キーボードが見える
操作を促すように、キーボードのWSADのキーが赤く塗ってある
周囲を見渡すと、部屋にはさまざまなものが置かれている
このなかから使えそうなものを探そう
本作は、実はキーボードによる2Dキャラクターの操作だけではほとんど先に進めないようになっている。そこでどうやって道を切り開くかというと、先ほど説明したマウス操作で一人称視点の主人公を動かし、各種オブジェクトを使って2Dゲームへと干渉して、2Dキャラクターが先に進めるように手助けするのだ。この文章だけではなかなか理解が難しいと思うので、以下に具体例を挙げよう。

2Dキャラクターを移動させてしばらく右へと進んでいくと、暗闇があって前へと進めない場所にぶち当たる。ここは暗くてよく見えないが、可燃性物質で満たされたドラム缶が進行ルート上に積み上げられており、キャラクターの行く手を遮っているのだ。

そこで一人称視点の主人公を操作して、すぐそばにあるライターを手に取ってみよう(対象のオブジェクトに視点を合わせた状態でマウス左ボタンで手に取る。マウス右ボタンで手にしたオブジェクトを手放す)。すると、ライターの火で2Dゲーム内の暗闇を照らすことができるのだ。勘のいい読者の方々ならお気づきかと思うが、ライターを持ったまま視点を移動させ、あとは邪魔なドラム缶に火をつけて道を切り開けばいい。
ライターを手にして、2Dゲームのドラム缶のそばへとライターを持っていけばいい
発電機のような機械と、眼前を閉ざすシャッター
ゲーム外のオブジェクトを使って、ゲーム内に干渉するというのはかなり荒唐無稽な話なのだが、『ATUM』のこのプレイ感覚は実に奇妙で、今まで味わったことのない楽しさを覚える。基本的にはこの仕組みを使って進行ルートを確保し、先へと進んでいけばよい。

ゲーム自体は短く、クリアまで20分程度、時間がかかっても30分くらいだと思う。パズルの質も決して高いわけではない。干渉に使えるオブジェクトも少なめで、パズルとしての難易度もかなり単純な部類に入る。それでもあまり類を見ないタイプのゲームプレイは非常に魅力的で、目新しいものが好きな人にはぜひともプレイしてほしいと感じた(のが去年の秋で、こうして紹介は遅れてしまったわけだが)。なお、本作はIndependent Game Festival 2012に提出されており、Student ShowcaseにてFinalistとなっている。

IGF公式サイト - 2013 Independent Games Festival Finalists
http://www.igf.com/02finalists.html
IGF公式サイト - 『ATUM』
http://www.igf.com/php-bin/entry2013.php?id=1278
まったくの余談だが、よくある手法ながこのゲームの終わり方が筆者は好きである。また、できることならさらに拡充した内容の本作をプレイしてみたいところだ。

『ATUM』は公式サイトで無料公開されている。ダウンロード版はない模様で、ブラウザ上からのみプレイが可能だ(リンク先にあるPlay Atumからプレイできる)。プレイの際にはUnity Pluginが必須となる。

『ATUM』公式サイト
http://atumgame.com/

コメントを記入する

Powered by Blogger.

Back to Top