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インディーゲームをSteamで配信する意義について

Posted on 2013年2月20日水曜日 | 4 Comments

※当初、「蒸気に覆われた聖域は、PCゲームのディストピアか? ――Steamとインディーゲームの今後――」という記事タイトルであったが、単にインパクトを重視しただけの内容の伴わいタイトルになっていたため、改題した

Steamと言えば、海外産のPCゲームをプレイする人で知らない人はいない、と言っても過言ではなかろう。今回はそんなSteamについてちょっとだけ書いてみたい。

Steam
http://store.steampowered.com/
2013年2月26日追記
本稿が抱える問題点や検討すべき事柄を、記事末尾に追記。また、コメント欄にとても真摯なご意見をいただいた。これから本稿に目を通す方は、ぜひコメント欄まで読んでほしい。


Steamについて

PCゲーム界の巨人たるValveが創りあげたサービスSteamは、数多あるPCゲームダウンロード販売サービスにおいて事実上の一強と言って差し支えない存在だ。コンシューマゲーム界の巨人Electronic Artsが投じたOrigin(旧EA Store )、かつて時代を彩った名作やレジェンド級のタイトルを幅広く扱うGOG.com といったように先駆者Steamの成功を追うような類似のサービスもあるものの、やはりそこに肩を並べるほどの存在になったとは言いがたい。

むしろUbisoft EntertainmentのUplayや、露骨なSteam離脱を試みたOriginといった存在が、ゲームファンから大きな反発を受けているという印象さえある。

もっとも、これはOriginやUplayの仕組みがSteamの持つそれと違って、成熟していない点が大きいだろう。言ってしまえば、Originは単なる購入用サービスだし、Uplayに至ってはSteamでの認証に加えて、さらにUplayでの認証が必要となる余計なお世話に成り下がっている。なかでもUplay側のサーバトラブルによってSteam側までも被害を被るといった出来事は非常にクリティカルな問題であり、反発を招くのは仕方のないことであろう。

Origin
http://store.origin.com/
GOG.com 
http://www.gog.com/
Uplay
http://uplay.ubi.com/

Steamで配信する意義

ではSteamで配信する際のメリットとはいったいなんであろうか。今回は、たびたび語られているユーザー視点の話ではなく、開発者視点での話をメインにして考えてみたい。話を伺ったのは、マインドウェアのMicky Albert氏。氏はマインドウェアの代表取締役で、同社は『Super Chain Crusher Horizon』を手がけた開発会社である。

Albert氏は、現在のSteamの圧倒的な状況について、以下の3点を指摘した。
  1. ビッグタイトル
  2. オンラインランキングや実績
  3. アクティベーション
1は言うまでもないだろう。何百万本というセールスを期待してリリースされる、いわゆるAAAタイトルと呼ばれるようなPCゲームの存在である。これらのほとんどはSteamで配信される。Electronic Artsの『Battle Field 3』、それに『Starcraft』シリーズや『Diablo』シリーズといったBlizzard Entertainmentの作品群などの例外もあるとはいえ、やはりSteamでリリースされないビッグタイトルはとても少ない。

有力タイトルがたくさん集まれば、そこにゲームファンが集まるのは必然の流れである。大きなタイトルに足並みを揃えるようにややこぶりなタイトルも集まってくる。我々ユーザーから見てもこの点は理解しやすい。

第2に挙げた要素は、プレイヤーと彼らが成すコミュニティを囲い込むのに効果的だ。フレンドやギフトといったプレイヤー間の動きを活性化させる機能もこれらに含めてよいだろう。味気ないSteam実績やメッセージの送りづらさは、MicrosoftのXbox LIVEに劣ると私自身は感じているが、コミュニティ管理にスクリーンショットの投稿、さらにSteam Workshopといったように優れた面も多数存在し、一概にどちらが優れているとは言えないだろう。また、Albert氏は「実績やオンラインランキング機能をしっかりと抑えている唯一のPCマーケットがSteamである」ことも強調している。

上記2点は、ユーザー数に大きく影響を与える部分で、開発にとって大きな購買が見込めるというものである。続く第3の要素アクティベーション、つまりプロテクトに関する問題は、もっと開発者寄りのメリットである。

ゲームデータのコピー問題は今になって始まった話ではないが、「CDキーやDRMとアクティベーションによる合わせ技での強固なコピープロテクトは必須」とAlbert氏は語る。当然、GamersGateやGreen Man GamingなどのSteam以外のサービスも、これらの事情を問題視している。しかし、配信サービスを行なっている彼らとてDRMは外部発注となってしまうため、別途コストがかかってしまう。結果、独自にDRMをかけてもらうとなると、開発側の取り分が15%程度減ってしまう*1のだそうだ。これは中東の販売サイトなどでも同様で、そもそも単価の安いインディーゲームではなかなか難しく、コピーの餌食にならざるを得ない構造に陥っているとAlbert氏は話す。

GamersGate
http://www.gamersgate.com/
Green Man Gaming
http://www.greenmangaming.com/

*1 インディーゲームのダウンロード販売における配信側の取り分は、以下の記事が参考になるだろう。だいたい20~30%くらいだ。日本のPLAYISMも、代表のIbai Ameztoy氏がインタビューにて30%を自社の利益としてもらっていることを明かしている

The Indie Mine - The Indie Distribution Services Roundup
http://theindiemine.com/indie-distribution-services-roundup/
PLAYISM
http://www.playism.jp/
アプリ★ゲット - PLAYISM代表、イバイ・アメストイ氏特別インタビュー【前編】グローバル化するゲーム業界でカギとなる「ローカライズ」という仕事
http://appget.com/c/news/6422/ivai1/

「ならば開発が自前でプロテクトをかければよいだろう」と思う方もいると想像するが、Albert氏によると「セキュリティに関連する技術とゲームを作る技術とはまったく異なっていて、例えるなら野球とけん玉ほどの差がある」のだそうで、そんなに簡単な問題ではないらしい。Steamならば、よそよりも簡単にこの問題の解決を図ることができるのだ。

以上のようにValveが築き上げたSteamは、とても強固な構造をしているのである。

Steamで爆発的に伸びるセールス

ではSteamでリリースすると、売上にどの程度の影響があるのだろうか。以下では、Steamで配信したタイトルの売上の例を2つ挙げる。これらはいずれも極端な例かもしれないし、いかんせん具体例として数も少ないのだが、インディーゲームにおいても(インディーゲームに限定する必要はないのだが)Steamで売ることの意義は伝わるかと思う。

2011年リリースの『Atom Zombie Smasher』

ほかのサービスと比較して、Steamでの売上が圧倒的なことがわかる『Atom Zombie Smasher』の2011年12月の売上データ。当時の本作は、Steamの大型セールとともに行われた石炭集めのイベント対象になっていたため、売上が伸びている面もあるだろう。とはいえ、それだけで説明するにはあまりに大きすぎる差である。

  • Steam: 96,000
  • BMT Micro (direct sales*2): 1,800
  • GamersGate: 155
  • Direct2Drive: 87
  • Impulse: 85
  • Ubuntu Store: 48
  • Desura*: 24
    *shorter sales period.
*2 公式サイトでの直販だろうか? 現在、『Atom Zombie Smasher』の公式サイトでの購入はHumble Store経由での購入となっており、いまいち意味が捉えられなかった

『Atom Zombie Smasher』公式サイト
http://blendogames.com/atomzombiesmasher/
The Indie Game Magazine - STEAM MADE UP 96% OF ‘ATOM ZOMBIE SMASHER’ SALES IN DECEMBER 2011
http://www.indiegamemag.com/steam-made-up-96-of-atom-zombie-smasher-sales-in-december-2011/

2011年リリースの『Blocks That Matter』

本作はXbox LIVE Indie GamesとしてXbox 360向けにもリリースされており、ゲームコンテストDream.Build.Play 2011 Challengeで大賞(grand prize)という栄誉とともに賞金$40,000を手にしている。しかし、売上本数はPC版(Win/ Mac / Linux)のほうがはるかに多い。また、詳細な数字は明かされていないものの、PC版の売上トップ3は以下のようになっている。
  1. Steam
  2. Indievania
  3. Desura
『Blocks That Matter』公式サイト
http://www.swingswingsubmarine.com/games/blocks-that-matter/
The Indie Game Magazine - STATS THAT MATTER: SWING SWING SUBMARINE SHARES SALES CHARTS
http://www.indiegamemag.com/stats-that-matter-swing-swing-submarine-shares-sales-charts/

脱Steamの可能性

私が個人的に好きなDesuraについては、Albert氏によると2012年夏頃のDesuraの会員数は20万に満たない程度、現在は25万人を超えたところまで来ているらしい。一方のSteamはと言えば、リアルタイムで400万人オーバー、ピーク時は600万を突破するほどの勢い*3のときもあり、その規模はDesuraの比ではない。

*3 Steam Stats参照のこと

Steam - Steam & Game Stats
http://store.steampowered.com/stats/
参考に記事執筆時のSteam Statsのスクリーンキャプチャを貼っておく
インディーゲーム専門のDesuraと、ジャンルを絞らずに様々なPCゲーム(当然インディーゲームも含む)が集うSteamとを比較するのもおかしな話ではあるのだが、やはりパイの差というものは歴然としている。仮にユーザー数をインディーゲームに限定したとしても、Steamのほうが圧倒的に有利な数となるのは否定できないだろう。そして、こういったユーザー数の差、そして先に挙げたような数々のSteamの優位が生み出すのは、言うまでもなく一党独裁である。具体的には、Steamが割引を勧めてきた場合に事実上断ることができない、価格設定も同様に好きにはできない、というようなことがあるのだとAlbert氏は語った。

Steam上のインディーゲームの受け皿といえば、2012年に始まったSteam Greenlightがある。とはいえ、本ブログの『LA-MULANA』のインタビューでも触れたようにGreenlightは不透明な部分が多く、その舞台に立てるのはほんの一握りなのだ。

関連記事:
『LA-MULANA』開発者インタビュー 前編
http://nydgamer.blogspot.jp/2013/01/la-mulana.html

そういった状況でAlbert氏が投入したのが、Gamers Universeである。これは独自に開発されたオンラインランキングや実績、そしてプロテクトを備えた総合的なシステムのことだ。氏が手がけた『Super Chain Crusher Horizon』*4に搭載されているほか、すでに何社かとの契約も決まっているとのこと。今後、Desura IDでのログインも検討しているそうで、個人的に今後も注目していきたい。

*4 3200*800ドットというハイパー横長画面シューティング。デュアルモニタが推奨されているが、デュアルモニタでなくともプレイはできる。開発が公式にアップしているプレイ動画を貼っておく
以下が、開発より提供いただいたフルサイズ(3200*800)のスクリーンショット。


『Super Chain Crusher Horizon』公式サイト
http://pinball.co.jp/games/SCCH/

Steam一強の現状と、その背景にあるもの。ひょっとすると、インディーデベロッパの明日を照らすのはGreenlightではなく、Gamers Universeや未来に登場する同じようなシステムなのかもしれない。

Micky Albert氏のコメント

話を伺ったAlbert氏のコメントも併せて掲載する。
現状のユーザー数が誰の目にもわかるDesuraと現在アクセスしてるユーザー数が誰の目から見ても明らかなSteamを比較すると、いかにSteamが巨大な存在であるかがわかると思います。Green Man Gamingさんでは弊社ソフトウェアを取り扱っていただいており、ユーザー数も把握しているのですが、どうしても後発でクライアントもSteamと比較したら貧弱と言わざるを得ずユーザー数で圧倒的大差がついています。

アクティベーションやDRM

8bitパソコン、16bitパソコンの頃はプロテクト戦争が盛んでした。この頃、生産会社によってはコピープロテクトは無料。そうでない場合もディスク1枚あたり15円ほどで対応している会社がほとんどでした。当時のゲームソフトは7000円以上だいたいしていたので、現在の$10以下がほとんどゲームであるインディーズ市場においてはDRM代で15%が消えてしまっては大打撃、かといってDRMフリーでは商売あがったりになりかねません。もちろん、それでも売れるゲームはあるとは思いますが、大きく機会損失をしているのは間違いないところでしょう。

また、もっと大きな問題として「ソフトウェアは無料である」という認識を持つ人が増えてしまうことでしょう。iPhoneのApp Store等を見ると無料のゲームにも極端なクレームの付け方をする人を目にしますが、ニンテンドーDSのマジコン、ソーシャルゲームの登場、iPhoneやAndroidでの安価なゲーム、PCの安価ダウンロードタイトルが月日の流れに乗って登場してしまったこともあり、ダウンロードだけど販売しているゲームをコピーすることに全く抵抗がない人が相当数いて、年齢が若くなればなるほど、こういう人達が増えてしまっているということは、将来的にこの産業の衰退に繋がりかねないと危惧しています。

ダウンロード販売会社でDRMの種類を書いてる会社がありますが、これは辞めて欲しいところです。

このような問題があるなか、抜け穴はあるのかもしれないが、事実上ほとんどユーザーが正規ユーザーな状況になるSteamは非常に優秀といえるでしょう。

Micky Albertについて

マインドウェア(旧M.N.M Software)でMicky Albertの行ってきた仕事なのですが、デベロッパーであり、1988年~1997年までは自社でもゲームソフトをパッケージ販売していました。雑誌社周りからお店への営業、そしてもちろん私自身が監督をつとめ、時にはメインプログラマでしたから、パブリッシャ、デベロッパ、いずれの経験も相当期間あります。

キャリアの開始は中学2年の秋に日本ファルコムという会社でプログラマのアルバイトなのですが、この当時にファルコムは半分はパソコンショップでした。今でこそ上場企業ですが、当時はまだ中小企業で、社長を含め誰でもレジ担当を行っており私も経験があります。開発業務としてもゲームのみならず、家電のファームウェア、F-1チームに会社として空力エンジニアを派遣し、ウェブをすべて任されていました(何度かチャンピオンになった鼻の曲がった人がオーナーの青い車を走らせていたチームです)。また、90年代後半より実機のピンボールの開発、リース、販売、ピンボールのリースによりゲームセンターとのつながりが深くなったことでいくつかのタイトルに関してはゲーム基盤の卸も行っていました。

そして、近年では任天堂から発売された『カタチのゲーム まるぼうしかく』、『燃やすパズル フレイムテイル』を開発、3200*800ドットという、PC用に史上最大の解像度を誇る横スクロールシューティングゲーム『Super Chain Crusher Horizon』を発売しました。

今回の私のコメントは、単に開発のみを行ってきた者としての視点ではなく、様々な角度から長期間にわたりゲーム産業に携わってきた者のコメントして受け止めていただければと思います。
なお、氏は「多くのユーザーの方に現状のマーケットを深く理解していただき、ゲームと向き合う時間が少しでも楽しい時間になってくれれば幸いです」とコメントを結んでいる。

マインドウェア公式サイト

http://pinball.co.jp/
2013年2月26日追記
コメント欄にある指摘や、それに対する私の返信にもあるとおり、本稿は「感情論を発端とした、主観に大きく偏った結論ありきの展開」という過ちを犯している。以下では、いささか簡単ではあるが、本稿の問題点や検討課題を列挙しておきたいと思う。

  • Steam一強とインディーゲームという枠組み
    → コメント欄にもある通り、インディーゲームに限定して話すこと自体に無理がある
  • Uplayの2重認証問題は、Steam経由で該当するソフトを起動するときのみ
    → 事実は把握していたが、公平性に欠ける記述を行った
  • GOGの掲げるDRMフリーという理念の非提示
    → DRMが売り上げに対してどのような影響を及ぼすかという議論は、未だに決着を見ていない難しい問題であるものの、DRMを語る際にGOGを語らないのは手落ちである
  • Steam批判を行いながら、解決方法として提示した方法がSteamのそれに似たシステムである
    → Steam以外に同様のシステムが生まれ、それが対抗として成り立つのであれば同様のシステムでも意味はあるのだが、根本的な解決とは言いがたい
  • Steam非対応タイトルの成功例を加味していない


Comments:4

  1. いつも楽しみに拝見しているのですが、ちょっと今回のエントリは何を伝えようとしているのかわからないです。

    扇情的なタイトルに反して実際steamがどのようにインディゲームのディストピアになっているのかが書かれていませんし、他の例にしても思いつくままに挙げられている印象で、それを通して何を伝えようとしているのかさっぱりわかりません。

    どのへんがSteamとインディゲームの今後について述べられているのでしょう?

    なにより最近のインディゲームのメジャータイトルは、steamで販売されているから売れるというわけではありません。MineCraftは別としても、今人気のあるインディーゲームはPath of Exileなどsteam外のタイトルが多くあります。むしろCloud Fundingがインディゲームのユートピアなのかディストピアを語るほうがまだ時代に即しているのではないでしょうか? steamがインディゲームに果たす役割は大きなものですが、その影響力は数年前にくらべると小さなものになってませんか。今更話題にするのは周回遅れな感じがします。

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    1. 真摯なコメント、そしていつもご購読いただき、ありがとうございます。記事タイトルに関しましては、仰るとおりだと思いましたので改題いたしました。

      今回の記事は「事あるごとにSteamを持ち出す風潮」に対する気持ちが発端です。「Steamでリリースされさえすればいいのか」という疑問が私のなかにずっとあり、それに対する考えをまとめました。ただ、「思いつくままに挙げられている印象」とご指摘されたとおり、データの参照の仕方や話の展開のさせ方(特にSteamを槍玉にあげる形を取りながら、その解決方法として提示したのがSteamと類似の方法であること。もちろん、一強を避けたいという意味では大きく意味があると思っています)などは稚拙であったなと反省しております。

      Steamの影響は十分すぎるほどに大きいと感じていおり、周回遅れだとも思っていませんが、それも含め、今後の記事で言及していければと思います。

      削除
    2. 「事あるごとにSteamを持ち出す風潮」があると私には感じられません。steamの実ゲーム数500超のプレイヤーですが、steam外のインディゲームもよくやっています。実際のところsteam外でローンチして、話題作人気作になったものはPoEやTo the moonなどがすぐ思い浮かびます(To the moonがsteam展開されたのは、インディゲームとして十分なステータスを築いた後のことです)。今後の記事で話題を展開されていくのでしたら、「事あるごとに~」があることを具体的に示していただけると問題意識が共有できます。現時点では、steamを出自とするインディゲームで実際に話題作人気作となったものは360からの移植作や、unreal engine(そりゃsteamで出すでしょう。ミドルウェアサプライヤーとしてのvalveは極めて優れていると思います)を使っているなどのものが多く占めていて、「事あるごとにSteamを持ち出す風潮」がインディゲーム全体にあるとは思えないのです。話題にもならないような(内容のない)インディゲームが箔付けるためにGreenlightに群がってるのはともかく。

      Greenlightと書きましたが、Mozuさんの書かれていることは論点がちょっとぼやけています。Mozuさんが仰有ろうとしているのは、インディゲームをsteamで配信する意義についてだということは理解しました。ですがいくつかのことがごっちゃになっています。

      まず、DL販売DRM管理プラットフォームが1強状態であることの弊害。これはインディゲームに限った話ではありません。大手パブリッシャーが出すゲームにおいても、steamDRMだから買う、そうじゃないと買わないという層はかなり大きく存在します(海外forumでもsteamDRMかどうかがよく話題にされているように)。このことを話すのに、インディゲームだけを切り分けて話すのは適切ではありません。

      次にGreenlightの問題。これはマーケティングから猫も杓子もインディディヴェロッパーが殺到しているという話ですよね? これについても、近年の日本ではたとえば、DSが全盛期だったころには各社の販売予定を集計すると、12月に300超のタイトルが集中するなんてアホなことが起こったのと同じようなことです。または、モバゲやGreeがサードパーティを受け容れたときに、猫も杓子も突入したのと同じようなことです。実際にそのマーケティング戦略に従って、大当たりしたディヴェロッパーはどれほどあったでしょうか? Greenlightに今殺到してるのは、面白いゲームを作る才能はなくても、マーケティングの才能が自分にはあると思ってる人たちが、本人たち自慢のマーケティングに従って行動しているだけです。さて、それによってDSにディストピアが発生しましたか? ソーシャルゲームにディストピアが発生しましたか? ただ単に淘汰が進んで、良質なゲームを出すところだけが生き残る結果に終わっただけですよね。

      ですので私は以上のことはインディゲームの未来に関わる問題だとは思っておりません。それよりもやはりCloud Fundingで企画が通りやすいものがどんどん開発しやすい状況となってしまい、無名の人が作家性の強いゲームを作るということが難しくなることのほうが、インディゲームという豊穣な大地を痩せさせてしまうんじゃないかとわずかばかり心配しています。でも、ほんとの才能が作ったゲームであれば、どうにかなると信じてますけどね。Fundingできなくとも、Greenlitにならなくとも。

      さて、その上で、Mozuさんがどんな論を展開させていくのか、楽しみにしています。

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    3. 丁寧な返信ありがとうございます。

      「事あるごとにSteamを持ち出す風潮」というのは、中盤以降で仰るような「猫も杓子もSteam」という部分です。Kick Starterを始めとしたCrowd Fundingサービス、それに新規のインディーゲームのフォーラム、あるいは公式サイトのFAQなどで「Steamに来るのか? また、そのときにすでに購入済みだった場合、Steamキーは発行してもらえるのか?」というような半ばテンプレート化したやりとりのことを指しています。

      『To the Moon』の成り立ちも、『Path of Exile』の存在も承知しておりますが、一方で『LA-MULANA』、『Unepic』のようなタイトルは不遇であると私の目に写っていました(今となっては、いずれもGreenlitとなりましたが)。そのようなことから「Steamでリリースされない限りは(売り上げ的に)勝負することも難しいし、同様の境遇にあるタイトルもあるのではないか」というような心情を抱いていたというのが本音です。

      いずれにしましても個人的な心情を優先するがあまり、論理に欠けた編集をしてしまったと猛省しております。先に述べた点も、そもそもSteamの良し悪しとは独立した問題です。

      GreenlightもCrowd Fundingと同様に、作家性が知らずのうちに後ろに追いやられ、マーケティング勝負になってしまうのではないかと危惧していますが(あえてそうしているのでしょうが、Greenlightの不透明さがこれに拍車をかけていると感じます)、今回の問題とは異なるかと思いますし、まだ整理がついていないので別の機会に言及したいと思います。

      記事編集はもちろんのこと、さらに自身の内で整理ができておらず散漫な回答となってしまったこと、改めましてお詫び申し上げます。

      最後に。

      >でも、ほんとの才能が作ったゲームであれば、どうにかなると信じてますけどね。Fundingできなくとも、Greenlitにならなくとも。

      ここにすべてが集約されていると思っています。
      ぜひともそうあってほしいです。

      とてもためになる貴重なコメントありがとうございました。できればコメント主様が記事を書いているブログなどありましたが、せひとも拝見したいので、できればお名前をお伺いしたいです。

      削除

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