> > Novectacleと『ファタモルガーナの館』はいかにして生まれたのか――『ファタモルガーナの館』インタビュー 前編

Novectacleと『ファタモルガーナの館』はいかにして生まれたのか――『ファタモルガーナの館』インタビュー 前編

Posted on 2013年10月30日水曜日 | No Comments

『ファタモルガーナの館』について、開発のNovectacleのメンバーに話を伺った。もちろん、以前、募集した質問への回答も、すべてではないものの含まれている。

『ファタモルガーナの館』公式サイト
http://novect.net

関連記事:
レビュー『ファタモルガーナの館』
http://nydgamer.blogspot.jp/2013/05/blog-post.html
『ファタモルガーナの館』とのコラボを含んだ企画のお知らせ
http://nydgamer.blogspot.jp/2013/01/blog-post_28.html

記事はネタバレを含んでおり、基本的にクリア済みのプレイヤー向けの内容となっている。未プレイの人は読むのを避けてほしい。記事は前後編の2部で構成されている。後編は以下のリンクから読める。

Novectacleと『ファタモルガーナの館』はいかにして生まれたのか――『ファタモルガーナの館』インタビュー 後編
http://nydgamer.blogspot.com/2013/10/fatamorganainterview2.html

サークル結成とノベルゲームを選んだ理由


こんにちは、Novectacle(ノベクタクル)の縹です。インタビューではサークルのメンバーも交えて回答していきたいと思います。回答者は縹(シナリオライター)を中心にして、靄太郎(イラストレーター)とがお(歌手兼作曲)の3人です。

縹けいか
――まずはサークル結成の経緯を教えてください。
 元々コアメンバーの4人*1はPBW*2で知り合ったんですよね。ロゴを手伝ってくれた㈹魔王くんとか、フェナキストスコープ描いてくれた真弓さんとかもPBW繋がりなんですけど。
がお PBWってなんだそれ。「なりきりチャット」で通ってきた私のこの田舎臭さ。
 Play By Web!! まあ、このあたりから我々の年代を察してください(笑) それぞれみんなドンパチ戦うような世界観で遊んでいたのですが、割とバラバラのところにいたので、声をかけるきっかけになったのは縹がGMをやったサイトです。そこに私含め4人がいたので「シナリオ、絵描き、音楽集まったし、何かできるんじゃない!?」って。当初はそのサイトの世界観でゲームにしようとしていたのですが、SFファンタジーのバトル物だったので、演出が未知数過ぎたため見送り、ヒューマンドラマ系に方向性を変えましたね。

――先ほどもあったように外注の方もいらっしゃいますよね。
 外注で関わって頂いた方は大勢いて、特に音楽は堤さん、守屋さん、Aikawaさんと、実力派の方々が揃っているんですが、こちらの方々についてはPBWの繋がりではないです。堤さんは私が堤さんの音楽が好きだったので、オファーをかけました。守屋さんは『霧上のエラスムス』の頃にご協力頂いて、素晴らしい仕事をしてくださるので「ファタモル」でもぜひという感じに。Aikawaさんは知人の知人という感じで、知り合いを通してお願いさせて頂きました。音楽は大変拘りたかったので、だいぶ偉そうな言い方であれなんですけど、曲から世界観を感じる人じゃないとお任せしたくなかったです。その点、サークルメンバーのMellok'nやがおさん含め、皆さん素晴らしい作曲家さんです。

守屋氏は、『ファタモルガーナの館』の人気曲7曲のオーケストラアレンジも公開している(下記動画参照)。

――ゲームという媒体を選んだのはなぜでしょうか。
 私が元々ゲーマーですし、働いているのもずっとゲーム会社なので、オリジナルのゲームを作りたかったんですよ。でもなかなかゲーム会社にいてもオリジナルの作品は開発できないですからね。業界的には縹なんて若造もいいところで……。大きなタイトルに関われるようになったのや、クレジットに名前を載せて貰えるようになったのもここ2年くらいの話です。そのようなわけで、自分たちの作品だと言えるものが欲しかったんです。「ファタモル」を制作し始めた4年前くらいは特に燻っていたので……。このまま自分が何も残せず消えていくのかと思うと、それも恐ろしかった。あと、全員の能力を活かしたかったんですよね。靄太郎さんも前から絵がうまかったですけど、仕事で絵を描いたことはなかったですし、がおさんやMellok'nもそんな感じで、縹としては「才能あるのにもったいない!」みたいに思ってて。みんなで作ればいいものができるんじゃないかな、と。今、我々は「ノベルゲームのサークル」ってなってますけど、「ノベゲが作りたい!」ってサークルじゃなくて「ゲームが作りたい!」ってサークルなんですよね。ただ、初期メンバー的にスクリプトをやれるのが縹くらいで、そして縹も詳しくないので、手の届きそうな範囲がノベルゲームだった、というのはあります。

――つまり、プログラマーがいれば*3ノベル系ではない作品もあり得る、と。
 大いにあり得ますね! これについては、今後の活動を見守っていてください。

4年に渡る開発を支えたもの

――『ファタモルガーナの館』の開発は4年に及んだということでしたが、モチベーションの維持は大変だったのではないでしょうか。
初期の体験版のチラシ
(公式ブログより)
 モチベーション維持は確かに……。
がお 個人的にははなださんが最初にプロットをばばーんと出してくれたこととか、途中途中で絵が入ってなくてもゲーム画面を見せてくれたことはよかったなあ。ヤコポに会うためにがんばったがお*4。あとは無駄に褒めまくることですよね! お互いを! 熱烈に! 褒めあう!!
 あんまりがおさんに褒められなかった気が(笑)
がお あ……。
 (笑) でも確かに、そういう部分は気を遣いましたよね。もちろん手放しに褒め続けるわけじゃないですけど、無報酬で作業を続けるわけだし、「いいね」って言葉がないと調整をお願いする際もキツいじゃないですか。
がお はなださん、デキるディレクター!
 仕事が忙しくなって放置状態のときも多々あったので、デキてないディレクターです……。そう、仕事といえばそれぞれみんな本職があるので、4年間ずっと制作を続けていたかと言えばそうでもないんですよね。でも制作に戻ってこられたのは、「完成しないと」って意識が強かったからだと思います。
がお 落としたときにもイベント会場に来てくれた方々がいて、そのときに頂いたお言葉がいい意味でプレッシャーになったね。
靄太郎 体験版を出せたのも大きいと思う。体験版で製品版を期待してくれる人が多かったから、「出さないといけない」って気持ちになりましたね。体験版がもし出ていなかったら、制作も続けられなかったと思う。
 やはりプレイヤーさんのお声って、大切ですよね。

――4年の間には『霧上のエラスムス』というスターシステムを採用した作品のリリースもありますが、これもモチベーションの維持とは関係しているのでしょうか。
 「エラスムス」はモチベーション維持というより、話題作りのような……(笑) 忘れ去られないために!
がお (笑) でもいい具合に相乗効果を産んでいるみたいで、考えてたよりずっといい結果になったよね。
 そうだね、生放送とか動画とかアップしてくれる人もたくさんいるし。派生物から本編入ってくれる人も結構いるね。本編出したあとですけど、今年のエイプリルフールに出した『セブンスコート』*5も、そこから我々の存在を知ってくれた人がたくさんいて嬉しいです。

――完成したときの気持ちは覚えていらっしゃいますか。
がお うぉおおおおおおおおおおおおおおおお! これに尽きる。
 (笑) 縹は終わった実感があまりなかったです。というのも実際に人の手に渡って、ようやく自分の手から離れた感じがします。制作は終わったけど、今度は手に取ってもらうために動いていかないといけないので、今も終わった感じはしていません。
がお なるほどー、靄さん*6は?
靄太郎 「終わった!!」っていうのは確かにあったんだけど、実際に冬コミ参加して、そこでの成果は予想よりだいぶ下だったから、縹さんほどではないけど危機意識みたいなのは続いていたと思います。
 リリースした段階で、今後のスケジュールとかも考えてたよね。靄太郎さんが言ったように初動があまりよくなかったので、このままウェブも更新しなくなると完全に終わるな、と思いました。なので、ウェブ企画であったり、人気投票とか四月ゲームとか、リリース後もファタモル関連の活動は止めませんでした。サークルに動きがあると、プレイヤーさんが話題に出してくれるかな……と。たぶんこのあたりの努力は報われているんじゃないかな、と思います。

(このあたりで、がおさんがウェブ企画*7にあまり関わっていないとやや拗ねる。
 そして「じゃあライブやろうぜ!」という話に脱線していく)

 話がライブに脱線していた!
靄太郎 がおさんの生声ライブ聴きたい。
がお 個人的にはやっぱ楽団の用意が難しいから、ちょろっとギターとかピアノとかでこそっと歌うくらいがちょうどいいわー。
 やろうやろう! というか質問に戻りましょう。

タイトル、エピソード、キャラクターに込められた意味

――『ファタモルガーナの館』のストーリーの生まれた経緯はどのようなものでしょうか。
 最初に描こうと思ったのが、女中の悲恋でした。ずっと愛する人を待ち続けた亡霊のメイドの長い軌跡というか、再び巡り合うためのラブストーリー的な。とりあえず自分が前に書いていた小説を引っ張り出してきたんですよ。「これを元にゲーム作ろう」って。この小説の段階で、三章まではほぼ完成していました。前述のように、キャラクター性に合わせて流れが変わったのはありますが。
靄太郎 幻の四章もありましたね。
 そう、幻の四章!(笑) この没エピソードの詳細は設定本で詳しく書くとして、当初もうひとつ物語がありました。ナチスドイツ時代の話で、リュディガーという負傷兵が主人公。白い髪の娘が館の女主人で、彼を介抱し……みたいな導入です。ただ、これ以上キャラを増やすと根幹の物語が収拾つかなくなるのと、ナチス時代は詳しい人は本当に詳しいので、ツッコミが恐ろしくてできなかった(笑) 以降、何か没になることをサークル内で「リュディガー現象」と呼んでました。
靄太郎 もう、それ言ってないですけどね(笑)
 一応、話のオチも含めたプロットはできているので、あとは設定本で!

――ゲームタイトルも印象的です。ブログでチラリと触れられていたこともありますが、タイトルに込められた意味を教えてください。
 タイトルの英題は「The house in Fatamorgana」で、「in」を使っているため「蜃気楼」として扱ってます。だから直訳すると「蜃気楼の中の館」で、意訳としては「幻の館」という感じです。あと『アーサー王物語』の妖精モリガンともかけていて、モリガンが最初の文献では歌のきれいなよい魔女なんだけど、後の文献では悪い魔女になってるっていう。このあたりの逸話がモルガーナと絡んでます。ですので、二重タイトルなんですね。

――モルガーナの名が出てきましたが、そのほかのキャラクターの名前にも由来はありますか。
 キャラクターに関してですが、メルとネリーはMellok'nの案です。アーティストから引っ張ってきたようです。
がお あ、そうなの!?
 そうそう。ポーリーンは可愛い名前にしたくて、当初カトリーンにしてたんですけど、何かと被ったのでやめました。ヤコポは普通に友だちの名前(笑)
がお 友だち(笑)
 縹がイタリア留学していたときに知り合ったんですけど、エラスムスの学生が集っているアパートの家主でした。最近、子供が産まれた!
靄太郎 その人は監禁癖があるんですか……?
 ないよ! 何言ってんだ!(笑) ……話を戻して、マリーアは元々の小説がマリアだったので。このあたりは定番的に、聖女の名前した女がとんでもない奴だった、ってパターンですね。エメ、ディディエ、ジョルジュは語感。会田幸正さんはその時代にいる名前を調べつつ、やはりこれも語感。ジゼルも語感。……語感ばっかりだな! でも、ミシェルはちゃんと意味がありますね。ミシェルっていろんな作品にいるので、最初は変わった名前にしたかったんですけど……。男女どちらでもある名前で、天使性とかも織り交ぜていくとなると、ミシェル以外あり得なかった。
がお うん、よくある名前っていうのもなんかいいと思う。すごくたくさんの人が「いい名前」と思って、純粋につけたものだから。
がおさんの上記の言葉にグッときた縹さんは、
『セブンスコート』のジゼルの台詞として、この言葉を使っている
がお ……そう考えるとリディー*8辛いね。なんかこう、純粋な愛情を持っている人なんだなあというか。素直な人だよね。価値観に逆らったりするというのを考えたりしなくて、満たされてるって純粋に思って、そういう人は私すごいと思う。
 リディーが女の子欲しがってるのも、理由的なものは存在しないんですよね。「女の子が欲しい」というのが理由というか。以前いとこが出産する際、「女の子がいい」と言っていて、なぜ女の子がいいのか質問したら、「だって女の子がいいでしょ」という返答だったんです。だから、そういうことなんだと思う。
がお でもリディーのそういうの、なんかわかるな、おてんばでも何でもいいんだけど、ただ、「女の子」というアイデンティティを持つ子であれば、満足してたんじゃないかなって。
 ですね。ミシェルのインターセクシャルも、設定的に一応細かく決めているんですが、ちょっと生々しい話にもなるのでまた別の機会に。

――各エピソードにテーマはありますか。
 こんな感じだと思います。

一章:子どもと大人の移り変わり。自己愛。
二章:人間性の境界。狂気。
三章:隠された想い、すれ違い。信じることについて。
四章:寓話のような美しさ。

五章から最終章までは大きな流れになっていて、悲劇と向き合っていく強さとか、主観による真実の違い、性自認の不一致とか……ですかね。でも性自認に関しては、それが主題というよりも、自己認識だと思う。だから性に関する問題というよりも、己に対しての自問自答みたいな、きっと誰しもが抱える部分が主軸です。性に関するアイデンティティはよく分からない人も多いと思いますが、結局それは、自己認識の話に集約されると思っています。そう考えたら、わからない問題でもないんですよね。ネガティブ属性の人は共感しやすいのではないでしょうか……(笑)

――そういえばプレイヤーから「1日あたりにどのくらいの量のシナリオを書くのか」という質問もありました。
 ちょっと難しい質問だな! というのも縹はあまりコンスタントに書けないので、書くときは一気に書くんですけど、書けないときはさっぱりっていう。たとえば『霧上のエラスムス』のサイドストーリーは、あれ170kbくらいなんですけど、2日です。まあ2日って言っても寝てないから、4日分くらい使ってるのかもしれない。『セブンスコート』は230kbくらいで、あれは3日か4日とかそのくらいかな。これも寝てない。
靄太郎 狂気。
 でも書けない時は0kbなんで……(笑) あ、仕事ではもう少しまともなやり方していますよ!!

開発中の変化――魔女の設定、チームそのもの

――少し具体的な話に移ろうと思います。開発しているうちに大きく変わったものはありますか。
 これは結構あるな! ストーリー自体は最初のプロットがあって、そこから肉づけしていったので、大幅に別物になったということはないんですけど、私の話の作り方がプロット準拠ではなくキャラ準拠なんですよね。書いていくうちにキャラクターの造形もより詳細になっていくので、「このキャラはこういう行動しないんじゃないか?」っていうのも出てくるんですよ。その場合、キャラクターに合わせて話の流れを変えますね。
靄太郎 各キャラかなり掘り下げていった感じになりましたね。ミシェル、ジゼル、ヤコポ、モルガーナはかなり当初と印象が違ったなあ。
 ヤコポも!? あれは一貫して本心の言えない男だったような気が(笑)
靄太郎 キャラ性はそうなんですけど、肉づけされてより複雑な感じになったと言うか。リアルになりましたね。それぞれ行動や葛藤が、地に足のついた感じに見えた。
がお 割とこう、ほかのゲーム的なものを見てると、主人公が「うおー! 俺はやるぜー!」って言って急に強くなったりとかしちゃうもんね。
靄太郎 その演出自体は王道で好きだけどね! ミシェルのは、地に足のついてない強さではないからいい。
がお あとモルガーナ! モルガーナの話が出てるけど、モルガーナが思ってたよりずっとシンプルなデザインだったのはちょっとびっくりしました。
 最初のデザイン、めちゃくちゃファンタジーだったけどね! シンプルなのは時代感もありますね。
初期のファンタジー色あふれるモルガーナ
没ラフ集より
靄太郎 モルガーナのキャラ設定の変遷は「黒猫」から始まって「もっとアバウトな概念的な(?)もの」、「実体」と変遷していって、このあたりよく覚えてないんだけど、そこから「女の子」、没になった「ファンタジー」と進んで「王道的な地味」に落ち着いた感じだった気がする……。
がお そういえば黒猫だった!
靄太郎 体験版以前は黒猫だったと思う。
 忘れていた……。
靄太郎 おい(笑)
 このあたりはちゃんと思い出して設定本にしましょう(笑) 最初は結構、「ザ・魔女!」って感じだったなあ。
がお キャラクターのビジュアルもだんだんリアルな方向で肉がついてきた感じなのかな。
靄太郎 リアルっていうより、受けがよいほうに調整した気がします。
 最初、そのあたりで衝突しましたね。
がお 音楽的にもそうだった気がする。めろ*9が突っ走っていたから。
靄太郎 俺もめろも「自分のやりたいものができる」って意識だったんだと思うな。
 でもそれだと、ひとつの作品に仕上がらないんですよね。
靄太郎 今はまさにそうだなと思える……。
がお 最初にこうして「チーム」ができあがったのであった……。

(一同同意)

 そうそう、制作期間4年のうち、最初のほうは揉めたり、ああだこうだ的な期間でしたね。制作としては進んでなかったけど、あれがなかったらチーム自体ができてなかった。
靄太郎 よくまとめてくれたと思います……。
 今だから言えますけど、ストレスがヤバかったですよ(笑) でも自分としてもいい勉強でした。みんながみんな、初心者だったんですよね。技術的なところだけじゃなくて、制作するってこと自体が。最初のサークル結成の話にもかかりますけど、そもそもその道のプロが集まったわけではなかったから、手探りの連続でした。それでも今はこのメンバーでやれて本当によかったと思っています。
がお 音楽班のめろと私は、揉めるというより、むしろ基本的に事件すぎた。
 事件を起こす男、Mellok'n。
がお まじめな話をするとしたら、めろが作りたいものに私が技術的に追いつかなくて、結構苦労して、お腹鳴った音が入っちゃったりしたことですかね! それと主題歌作るときに私が歌えなさすぎて、「これ、コードがおかしいんだよ!」と逆切れしたことがあって。それに対してめろが「俺、耳おかしいんですよ」と結構マジで凹んで、でもコードを一緒に探しましょう、っていろいろやってくれたんだよね。結局、作り直しはできなかったけど、歌えない私に最後までつきあってくれたのはうれしかったなあ。
靄太郎 ……(がおさんが歌えないというのは嘘だな、と思っている)。
がお 話が逸れたので、キャラクターのほうに……。
 そうそう、キャラといえば、縹としてはミシェルがいちばん変化があったと思う。 当初はちゃんとイケメンだったので(笑) 体験版以前レベルの話ですけど、神秘的な方向性だったと思う。
靄太郎 デザイン上では、何かと無心というか情動のないキャラという指定だったはず。顔つきとか表情とか。
がお 舞台裏のせいで崩壊したんじゃ……。
 いや、どちらかと言えばエラスムスのサイドストーリー(笑)
靄太郎 たしかに(笑)
 あと、結局ミシェルが主人公なんですけど、「イケメン書いてもつまらないなー」と思って。なんか駄目なところがあるほうが、親しみを持ちやすいじゃないですか。だから話を膨らましていくうちに「ミシェルは人間臭いキャラにしよう」と思いました。最後のモルガーナに対する接し方とか、救い方とかも、プロット時点では結構突き放した感じだったんですけど、ミシェルのキャラクター性が固まるとそのあたりも変わっていきましたね。
がお ファタモルは人間の内面を描くような作品だったから、キャラクター準拠の作り方でよかったと思う。あと演出も好きですよ。個人的にはあのイチマス空いた選択肢の画面がヤバかったです*10。ミシェルのときみたいにどっかやったらなんか起きるんじゃないかと結構試行錯誤したりさ。キャラクター的な行動、とシナリオ的な行動がすごい形で融合したような気がする。
 よかった、いらん演出になってなくて……。あれはミシェルとプレイヤーをシンクロさせたかったんですよね。「あそこでためらう時間=ミシェルのためらい」みたいな。テストプレイヤーさんはあの場面で何もためらわずに刺し貫いてしまったので、そういう人もいるとは思いますが。

――そんな人が!!
 はい(笑) まとめてみると、私は弱さの見える主人公が好きなので、ミシェルはぼちぼち成功したと思ってます。

後編に続きます。

関連記事:Novectacleと『ファタモルガーナの館』はいかにして生まれたのか――『ファタモルガーナの館』インタビュー 後編
http://nydgamer.blogspot.com/2013/10/fatamorganainterview2.html

以下、注釈。赤字の注釈番号で該当の場所に戻ります。

*1 縹、靄太郎、がお、Mellok'nの4名
*2 Play By Web。インターネットを介して行うTRPGサービスのようなもの
*3 余談であるが、縹さんは、過去にNovectacle代表を募集するという破天荒なひらめきをしている。
*4 エイプリルフールに合わせてリリースされた、ウェブと連動したフリーゲーム。2013年4月5日リリース。のちに台湾のプレイヤーによる中国語版がリリースしたほか、ニコニコ動画にはフルボイス動画がアップされている

*5 がおさんはヤコポが好きです
*6 サークルメンバーの1人、靄太郎さんのこと
*7 キャラクターの人気投票や前述のファタモルオーケストラなど。最近だと、C85向けのゲストページの募集も行っている
*8 ミシェルの母の名前
*9 サークルメンバーの1人、Mellok'nさんのこと
*10 「刺し貫く」の選択肢のことやその他のネタは公式ブログの以下の記事が詳しい(当然、プレイ済みの方推奨)

ファタモルガーナの館に関する小ネタなど - Nove Blog
http://novectacle.lys.hiho.jp/?eid=64

コメントを記入する

Powered by Blogger.

Back to Top