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Ensemble Game Classicaで思ったこと

Posted on 2012年11月5日月曜日 | No Comments

practice
Photo: practice
By nosha
11月3日、日本においては文化の日だ。2012年のこの日、私はEnsemble Game Classicaという、ゲーム音楽の演奏会に足を運んだ。

Ensemble Game Classica公式サイト
http://egc.txt-nifty.com/

「実にゲームファンらしい、文化の日の過ごし方ではないか」となにやら妙な優越感を胸に会場へ向かったのだが、初めて味わうその時間は恐ろしく甘美で、胸を打ち震わせるには十分すぎる内容であった。

会場ではパンフレットが配られていて、目を通すとその日の演奏曲、そして取り上げるゲームに関する情報が記されていた。いや情報というよりかは、作品に対する熱意とも形容すべき内容である。なかでも最後に綴られていた、Ensemble Game Classicaの代表、大澤久氏の抱く想いがとても印象深かったので、大澤氏の許可をいただき、以下に転載させていただく。
ゲーム音楽とクラシック音楽について思ったこと

大澤久

我々は普段はクラシック音楽を演奏しています。もちろん仕事でポップスやそれに類する音楽を演奏することもありますが、元々はバッハやベートーヴェンといった西洋クラシック音楽に惹かれて音楽の道を志した者達です。でも、世代というものはやはりあるわけで、我々アラサー(という年齢になってしまったのだなぁ)の世代の多くはテレビゲームという文化に慣れ親しんできた世代でもあります。しかしながら、ゲーム音楽をガチで演奏しようという発想を思いつき・実践している人は案外少なかったりします。理由としては、クラシック音楽のほうが楽しいから、というのが大きいと思います。

僕はゲーム音楽はもちろん好きですが、バッハやベートーヴェン、ブラームスを聴いていた方が深い感動を味わえる、と、やはり思ってしまいます。それに気づいたのもわりかし最近ではあるのですが…。しかしゲーム音楽を聴いたり・演奏しているときに感じる、クラシック音楽をやっている時にはけっして感じることのない感情もまた、あるのです。それはやはり、幼少時・思春期に体験したできごとの追体験を肌で感じるからなのだと思います。

たとえば、田舎のおじいちゃん・おばあちゃんの家に行ったときの匂いを、ふとしたときに嗅いだ時、懐かしいノスタルジックな気分に浸れるように、ゲーム音楽を聴いたとき、童心に帰ることができます。クラシック音楽ではあまり感じることのない現象です。

ゲーム音楽はそこがいいんです。曲として完成度は正直な話し、クラシックにはおよびません。でも、祖父母から散々繰り返し聞かされたおとぎ話のよに、学校のチャイムのように、あるいは給食のコッペパンの味のように、自分の心の原風景を思い出させてくれる、鍵となる。

さて、ではいざ生演奏する時、どうすればいいだろうか。そう考えたとき、二つの考えが葛藤を始めます。原曲をそのまま再現して、アレンジを避けるべきであるという考えと、生演奏するのだから、多少は演奏効果があがる工夫をアレンジを以ってすべきであるという考えです。これについては色んな考えがあると思います。正直、これは好みの問題と思います。公式のアレンジCDでも、これはナイなというアレンジもあるし、マイッタ!これは良い!と思うアレンジもあります。それはアレンジャーの趣味とセンスが自分に合うか合わないかの問題です。

音間違いやフレーズの作りが原曲と違う場合もよくあります。単純に音が取れなかったケースもままありますが、これも編曲者の「解釈」である。と認識し、受け止めることができると、また、ゲーム音楽の演奏・鑑賞が楽しくなるかもしれません。

クラシックの場合はフレーズの作り方や音符は、作曲家の指示・時代のスタイルを踏襲するという考え方が支配的ですから、あまりそういう楽しみ方はできません。もちろん、そういう枠組みの中でいかに工夫し、面白くするか…というのがすごく面白いのですけれども。

スペースがなくなってきました。ゲーム音楽を演奏すること・聴くことというについて演奏する立場かあ4年間ほどわりとマジメに考えてきたので、色々言いたいことや、議論したいことはたくさんあるのですが、この辺りで失礼いたします。

またみなさんとお会いできる日を楽しみにしております。

※タイトルの太字は、私の手によるもの。ほかは原文のままである
私は熱心なゲームファンを自負しているので、「クラシックのほうが深い感動を味わえる」と言われれば、なにか寂しい気持ちがしないわけではない。ただ、ゲーム音楽はゲームプレイと密接に関わっており、作曲に対して抗えない制約が課されているのは間違いないだろう。、そう思えばこれは否定しがたい事実なのだと思う。

しかしながら、そのように感じている彼が、あるいはクラシックを愛して音楽の道を志した人たちの何人かが、ゲーム音楽に対して特別な気持ちがあるのだということがうれしくて仕方なかった。そして、その特別な心情の現れが、このEnsemble Game Classicaという活動なのだ。

惜しいことにEnsemble Game Classicaは、第10回となる今回の活動をもって、ひとたび活動が休止してしまう。彼らの活動はアンダーグラウンドなもので、もとより懸念事項であった著作権と対峙した結果である。時間が流れるだけでは解決されない大きな問題ではあるのだが、いつか彼らが活動を再会し、またあのような素敵な時間が味わえるときを待ちたいと思う。

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