今月のオススメ『No Time To Explain』
月初めにたまたま知って購入した『No Time To Explain』が思いの外、おもしろかったので紹介したい。
概要
■ジャンル 2Dアクション
■開発 tiny Build GAMES
■パブリッシャ tiny Build GAMES
■プラットフォーム Win / Mac / Linux
■リリース日 2011年8月15日
■価格 $10
■入手経路 公式サイト、公式アフィリエイト
■公式サイト http://tinybuildgames.com/
■プレイ時間
4~6時間程度。Season 2までクリア
Season 1のエクストラステージのみ未クリア
tiny Build GAMESはアメリカ サンフランシスコ州カリフォルニアの開発会社。2名で構成されている。本作はnewground.comで配信されている同名のフラッシュゲームがプロトタイプとなっており、そちらの成功がきっかけとなって開発に踏み切ったようだ。
Kickstarterで開発資金*1を集め、2011年秋にリリース。その後、「Season 2」と題した無料大型アップデートを行い、ステージの拡充やレベルエディタの搭載などによってコンテンツの充実が図られた。公式サイトによると『Minecraft』で知られるNotchから$2000の出資を受けたほか、Minecon 2011でのブース提供も受けたとのこと*2。
*1 集まった開発資金は2052名分$26,068で、目標額の3.7倍に相当する。達成までは1~2月かかったようだ >>http://www.kickstarter.com/projects/1296948465/no-time-to-explain-indie-game
*2 ちょっと自信がないので公式サイトの文章を転載しておく → Special thanks to Notch for pledging $2k, and offering a booth for us at MineCon 2011 >>http://tinybuildgames.com/about
ゲーム内容
タイトルはゲーム開始時の未来人の台詞「I am you from the future. There's no time to explain. Follow me!(オレは未来から来たお前だ。詳しい説明は後でする。オレについて来い!)」から。
巨大な蟹に襲われ、未来人が落としてしまうレーザーキャノン。これが本作の肝となる |
ストーリーはタイムトラベルとクローン人間をテーマにしたコメディ路線のものだが、正直あってないようなものなので詳細は省く。最初のイベントだけでたいして意味がないストーリーであることは誰の目にも明らかだろう。少なくとも深い感銘を受けたり、涙を流したり、何かを考えさせられるような類のものではない。プレイに際して英語力は不要。
プレイヤーのビジュアルが変わるのはタイムトラベルによって別次元の
自分になっているから。この次元ではプレイヤーはお金持ちになっている
|
ゲームは左から右へと進んでゴールを目指すオーソドックスな2Dプラットフォームアクション。最大の特徴は手にしたレーザーキャノンで、LMBを押し続けることでカーソルの方向へとレーザーを放つことができる。レーザーが地面や壁、天井などの障害物に当たると、プレイヤーは障害物の反対方向へと押し出されるようになっている。地面に撃てばプレイヤーが上方向へと飛び上がり、天井に撃てば落下速度が加速するといった具合だ。ジェットパックを用いた移動や、スポーツ系FPSによくあるロケットジャンプやグレネードジャンプを想像すればわかりやすいだろう。
通常のジャンプでは上れないような場所では、レーザーの反動で大ジャンプを行う |
これらの反動を駆使して、離れた足場へと飛び移ったり、高所へとジャンプしたりしてステージの最奥部にあるゴールを目指すというのが基本的なゲームプレイとなる。トゲに当たると即死、奈落に落ちると死亡といった2Dアクションの伝統的な記号は踏襲している。
トゲに当たらないようにレーザーを地面に撃ちこんでホバリングというようなテクニックも必要 |
数個のステージで1つのワールドを形成しており、解禁済みのワールドはワールドセレクトの画面からいつでもプレイできる。ただし、個々のステージを選択することはできない。例えば2-3をプレイしたくても、ワールド2を選択して2-1、2-2を順にクリアしなければならない。過去に該当するステージをクリアしていても、これは変わらないためやや不便だ。
特定のワールドでは最後のステージがボスステージとなっており、レーザーキャノンが初めてそれらしい使い方(攻撃)をされるが、ボス以外に敵らしい敵は存在しない。したがって極太レーザーで敵を壊滅させたいような人にはオススメできない。そういう人は素直にシューティングゲームをプレイするほうが幸せだろう。
蟹に鮫、恐竜と、ボスは巨大な動物が多い。
こちらの攻撃が有効部位に当たっているかどうかわからない点はちょっと×
|
レベルデザインは死にながら試行錯誤してステージの解法を見つけるというものになっている。このため、時間制限や残機制限はなく、リトライ自体もかなり早め。チェックポイントがかなり短い間隔で設置されていることも手伝ってリトライ自体が苦になることはほとんどない。ただほぼすべてのボス戦において、ダメージを受けても一定時間動けなくなるだけで攻撃を避ける意味があまりないのはもったいないと感じた。
アナログな操作感がもたらす、操作上達の楽しさ
アクションゲームの楽しさのひとつに、操作をものにして画面上のキャラクターを巧みに操るというものがある。『No Time To Explain』の楽しさはまさにこれだ。
マウス操作でレーザーを発射することがアナログな操作感を生み出しており、完璧に同じ操作をするのがなかなか難しい。結果、今まで慣れ親しんだプラットフォームアクションとは異なる操作技術が必要となり、技術上達のプロセスを楽しめるゲームとなっている。ステージ中にパズル要素が少なく、基本的には操作技能を追求するというレベルデザインも、この魅力をいっそう高めていると言えるだろう。
そもそも反動を用いたジャンプアクションと言っても、できるのは上方向や横方向への大ジャンプ、落下速度の加減速ぐらいでバラエティがあるとは言いがたい。しかし、これをアナログな操作感で味付けし、数多ある2Dプラットフォームアクションとの差別化につなげた点は意図的にせよ偶然にせよ素晴らしいことである。
水中ではレーザーの反動が倍加し、さらなる大ジャンプが可能 |
ステージコンセプトが明確なのも美点だ。ビジュアルを変えるだけでなくワールドに合わせてさまざまなギミックを登場させ、各ワールドの統一感を保ちつつ適度にボリュームを持たせることに成功している。インディーズゲーム界隈では素材や着眼点はいいものの、ぼやけたゲームプレイが延々続くようなものが割かし見られるほうだと思うのだが(個人的にこの手の典型は初代『Trine』)、本作にそのような問題はない。
ギミックはレーザーで壊せるブロックのほか、ジャンプバンパーに
ステージ回転などそれなりの数が登場する。左下の青い渦がゴール
|
ステージギミックだけではなく、要所要所で操作キャラクターを強制的に入れ替えて、新たな操作を習得させる場面が用意されているのもよい。あえて本作で使わずに別プロジェクトとして寝かせておくという選択肢もとれたと思うのだが、そのような(くだらない)出し惜しみをしないでゲームプレイに幅を持たせ、ほどよいアクセントを加えている。
序盤で使えるアメフト男のショットはロケットジャンプの挙動に近い |
墨と芸術家のワールドが好み。墨を壁に当ててステージの輪郭を明らかにさせながら進んでいく |
残念なのは一部異常に難しく感じる部分がある点。特に開始数分でぶち当たった難関では「これは$10をドブに捨ててしまったか……」と軽く後悔してしまったほどだ。
序盤の挫折ポイント。正攻法が無理なら上から進むという手も |
ボリュームは満足だが、リプレイ性は乏しい
ステージはSeason 2の分も合わせて恐らく100くらい(もっと少なくて80くらいかも)。
1ステージはせいぜい3~4画面程度で各ステージあたりのプレイ時間は短い。後述するようにリプレイ性も高くないので10時間以上のプレイとかは考えづらいが、$10の2Dアクションゲームとしては妥当なボリュームだろう。一応、レベルエディタを駆使すればもっと長く遊べる可能性があるが、コミュニティの大きさなどを鑑みると現実的とは言いがたい。
Season 2のキービジュアル。なぜかキービジュアルが異常に濃い |
なお、やりこみ要素としてHat集めがある。
Hatは特定のステージに設置されているHatアイコンを取ることで、プレイヤーのビジュアルを変えられるようになる、いわゆるスキンである。プレイに変化を与えることはなく単なるコレクションでしかないため、本作のリプレイ性は乏しい。
Hat自体はかなりの数が存在 |
念のために言っておくと、価格分の楽しさは十分に提供されるはずだ。デモ版は準備されていないが、プロトタイプにあたる無料ブラウザ版があるので気になる方はそちらでゲーム内容を確認するといいだろう。
無料ブラウザ版はこちら >>http://www.newgrounds.com/portal/view/558562
製品版と比較すると、ブラウザ版には次のような特徴がある。
■動作が軽い
■リトライが早い(製品版より上)
■ステージが1ステージだけ
■エフェクトがちょっと貧弱(主にレーザー)
■Hat集めやオプションなし
■操作は製品版と同じで、移動はADで行う。Wでジャンプ。LMBでカーソルの方向にレーザー発射。製品版はスペースキーで妙なポーズをとれるが(意味はない)ブラウザ版では不可能
■隠しルートがある
その他
環境設定が保存できず、毎回設定し直さなければならない点はマイナス。
私の環境*3ではデフォルトのフルスクリーン設定だと重く、ウィンドウモードか解像度を下げた状態でプレイしなければならなかった。これは別にいいのだが(正直言うと不当に重いような気もする)、解像度を下げるためにレターボックス表示にしてしまうとデスクトップの解像度も変わってしまい、ゲームを終了しても直らないのは問題ありだと感じだ。この現象が環境依存なのかどうかは不明
*3 ■OS: Windows Vista 32bit SP2 ■CPU: Core 2 Quad Q6700 2.66GHz ■メモリ: 4GB ■VGA: HD5850
総括
『No Time To Explain』のトレーラーで見られるバカっぽい(褒め言葉)ボイスアクトや、リッチとは言いがたいビジュアルによって、あなたはひょっとしてプレイに値しないゲームだと思っているかも知れないが、それは大きな間違いだ。
ジェットパックさながらの大ジャンプをする躍動感、それにマウスでのプレイが前提となっている独特の操作感は幾多のプラットフォームアクションと本作を差別化し、意義あるものにしている。いくつかのギミックや数人のプレイアブルキャラクターもプレイヤーを飽きさせない。
レベルデザインは複数回の死亡前提のオールドスクールタイプなものとはいえ、現代風の素早いリトライと頻繁なチェックポイントがしっかりとその問題を解消している。
Season 2アップデートによってボス戦やステージのバラエティが増加しており、ボリュームも十分だろう(一方でカットシーンも省略可能になった)。レベルエディタもコミュニティは小さいながら無限の可能性を秘めている。
『No Time To Explain』は小粒ながら優れたアクションゲームに仕上がっている。もしも私が本作の主人公のようにタイムトラベルができるなら、私は過去の自分にこう告げるだろう。
「オレは未来から来たお前だ。詳しい説明は後でする。さっさとプレイしろ!」
おまけ
『No Time TO Explain』はプロモーションの一貫としてアフィリエイトを採用している。
Clickbank.comなるサイトに登録してIDを発行し、アフィリエイト用のURLを好きなところに貼ればいいようだ。アフィリエイト経由で購入された場合、販売額の50%が転がり込んでくるという仕組みらしい。詳しくは公式サイトのaffiliatesを参照されたし >>http://tinybuildgames.com/affiliates
おもしろい試みだと思うし、ゲームそのものも好きなのでここに貼ってみようと思う。
ただ$100に達しないと俺の手元にお金は届かない(Clickbankの仕様)ので、たぶん俺がこれのおかげでお金をもらえることはないだろう。
これはアフィリエイトバナーです |
さらに付け加えると「Steamで配信したい」という旨の発言が公式サイトで行われているので、Steam配信を待つ(あるいは配信から数カ月後のセールを待つ)という選択肢もありだろう。「アフィ氏ね」なあなたなら公式サイトでの購入がオススメだ。
右側に貼ったバナーがアフィリエイトなので注意してほしい。なお、公式サイトで購入する場合は、公式サイトの同じバナーをクリックして進んでいけばよい。