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2012年5月6日日曜日

レビュー『Depth Hunter』

お宝の眠る海に潜り、トレジャーハント。さらには巨悪な人喰い鮫との死闘を繰り広げるというインディーズゲームが気になっていたので購入したのが、今回紹介する『Depth Hunter』だ。

しかし、残念ながら私の求めていたゲームは『Depth』という別のゲーム。『Depth Hunter』に出てくる鮫は非常に温厚で、スリリングな財宝探しはできずに終わってしまった。それでも日本語版も配信予定がある(後述)ということだし、(人喰い鮫に期待して)クリアしてしまったので紹介しようと思う。



概要


■ジャンル 3Dアクション
■開発 Biart
■パブリッシャ Biart
■プラットフォーム Win / Mac / Linux
■リリース日 2011年12月22日
■価格 12.99ユーロ(公式サイト)、$19.99(Desura)
■入手経路 公式サイト、Desura
■公式サイト http://biart7.com/node/14
■プレイ時間 3~4時間

開発はロシアのBiart。Konstantin Popovによって設立された会社で、2011年にアメリカにオフィスを構えたばかり。クレジットを見るかぎりでは開発者はほぼロシア人のようだ。ボスであるKonstantin Popovはゲーム業界に10年以上在籍するベテラン開発者で、ロシアのゲーム関連機構の会長なども勤めている、と公式サイトにある。

エンジンは同社の独自開発biEngineを採用。同エンジンはPC、Xbox 360、PS3、PSPに対応するほか、iOSとAndroidにも対応している。ちなみにSteamでリリースされているTPS『Deep Black: Reloaded』や、iOS向けにリリースされている『FISH & REEFS』もbiEngine製である(いずれもBiartの作品)。Physxにも対応しているようだが、効果のほどはわからず。

開発元の公式サイトには「NVIDIA、Intelとの技術パートナーである」との記述もあり(よくわからんが)、同じくロシア産のUNIGINE Engine*1に似たものを感じる。

公式サイトのほかDesuraで入手が可能。PLAYISMでも日本語版の配信が予定されている。開発がFacebook上で「ローカライズが完了したし、そろそろ日本でリリースできるよ(Depth Hunter localization is done. Close to release in Japan)」との報告をしているため*2、もうじきリリースだと思われる。記事執筆段階では英語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、フランス語が収録されている。


*1 DirectX 11向けのベンチマークソフトとの開発で知られるロシアのUnigine Corpによるゲームエンジン。同社の処女作『Oil Rush』に採用されている
*2 http://www.facebook.com/photo.php?fbid=10150697630281997&set=a.10150229914686997.319348.197300046996&type=1


Facebookでは日本語化されたタイトル画面が公開されている
海外ではリテール版も販売されている。また、PSNやXBLAでリリースする予定もあるようだ。

標準でXbox 360コントローラをサポート。本記事もXbox 360コントローラでのプレイに沿って執筆している。

ゲーム内容

プレイヤーはダイバー。操作体型は以下のとおりで、FPSライクなものが採用されている。

・左スティック:移動
・右スティック:視点移動
・Lトリガー:ズーム
・Rトリガー:スピアガン(銛付きの水中銃)の発射、カメラで撮影
・Aボタン:スピアガンとカメラの切り替え
・Bボタン:財宝の回収
・Xボタン:フラッシュライト
・Yボタン:ブースト

移動は早くないが、ブーストを使うことで若干素早く移動できる。ただ、ブーストは短時間しか使用できず、使用後は一定時間のクーリングが必要となり連続使用はできない。

画面左端のゲージは酸素ゲージ。海中で切れるとチェックポイントから再スタート
ゲーム開始時にミッションが与えられ、それを順次クリアしていくタイプ。ミッションは同時に複数与えられることはなく、進行は完全な一本道となっている。一定数のミッションをクリアすると次のステージ(海)に移動となる。

ミッションは全部で25あり、ステージはSOUTH AFRICA、BAHAMA、THAILANDの3種類が用意されている。

メインのモード以外に、クリア済みのステージを自由に泳ぎ回れるFREE MODE、撮影した写真をデスクトップの壁紙にできるPHOTO ALBUM(驚くべきことになぜか閲覧機能はない)、ゲームに登場する魚の情報を参照できるLIBRARYがある。

ニモー! LIBRARYはこんな感じ。
いちばん日本語されたときに恩恵を感じるのはここだろう


主なミッション内容

ミッションはだいたい以下の3種類。

[魚を捕まえろ]
一定数の魚を捕まえるものや特定の魚を捕まえるものなどいくつかのバリエーションがあるものの、やること自体はほとんど変わらない。

[写真を撮れ]

提示された条件に合致する写真を撮影する。条件となるのは魚や景色など。カメラを持つと、画面下部にスコアが表示されるようになる。このスコアがクリア条件となるミッションもある。

[財宝を見つけろ]
海底に埋まっている財宝を回収する。規定数以上の財宝を集めるとクリア。財宝の判定が大きいので適当にボタン連打しながら海底を移動するだけでOKなときが多い。

基本的なゲーム内容はこんなところ。以下でもう少し掘り下げて紹介してみる。あらかじめ断っておくと、正直このゲームにはさして魅力を感じなかった。したがってやや辛口の評価になってしまうことをご理解いただきたい。


独特なだけで終わってしまっているスピアフィッシング

海洋探索だけのゲームにしないように、銛付きの銃で魚を捕まえるスピアフィッシングを取り入れたと思うのだが、このスピアフィッシングがあまりおもしろくない。

FPSと同様にエイムして魚に銛を撃ち込むところまではよいと思う。銛が即着しないのでちゃんと魚の動きを予測する必要があるし、海中を気まぐれに泳ぐ魚に狙いを定めるのもそれっぽくてよい。が、銛を刺してからの操作に難がある。

まず銛が刺さると、画面上部に専用のバーが現れる。バー上には動く線があり、銛を引き寄せると右に、銛についた紐から手を離すと左に線が動く。線がバーの左右どちらかに振り切ってしまうと魚が逃げてしまうという仕組みだ。なお、銛を引き寄せるときは右スティックを時計回りに回転させる。銛を離すときは逆に左回りに回転させればよい。

まずこのシステムがとてつもなくわかりづらい。銛を引き寄せようと離そうとバーが振り切ってしまうのにはともかくとして、操作のさじ加減が難しすぎる。クリアしていおいてなんだが、いまだにこの操作で合っているのか不安が残っているほどだ。感覚的には魚の気分次第の運ゲーに近い。


魚の周りに黄色いサークルが表示されるときがあるのだが、よくわからない
スピアフィッシング自体はおもしろい着眼だと思うのだが、それを機能させる術が間違っていると言わざるを得ない。エイムする楽しさがあって、さらにそれを引き寄せる楽しさもあったはずなのに実にもったいない。


代わり映えしないミッション構成

地味に大きいのがこれ。

とにかくミッションが単調である。ほとんどやっていることは繰り返しに近く、どんどん作業感が増していってしまうのだ。前述のスピアフィッシングの操作性も相まって悪循環に陥ってしまっている。

また、リアル志向にした結果、魚をパッと見分けにくいのは仕方ないとしても「このエリアに目的の魚がいるようだ」といったダイアログをもっと出したり(あるいはLIBRARYモードで確認でるようにしたり)、もう少し工夫が欲しかった。それだけでもミッションに対する印象は変わっていたと思うのだが……。

鮫やイトマキエイ(マンタ)が登場するのに、彼らとの絡みが一切ないのも寂しい
ミッションには「制限時間内に○○しろ」というものもあり、そのなかには「5分以内で捕まえた魚の数の最高記録を更新しろ」みたいなものがあり、実際は1匹でも捕まえればクリアとなってしまい、レベルデザイン全体に問題を感じる。

ゲーム内容的にそんなに多くのことはできないのはわかっているが、ミッションクリアに対してプレイヤーが工夫をする余地を残すとか、もとからFREE MODEだけにして一定条件でステージがアンロックされるというような形のほうが有意義だったと思う。


肝心要のグラフィックもあと少し

色とりどりの魚を眺めたり、自然の作り出す美しい海底を泳ぐ部分にこそ楽しさを見出しているユーザーは「スピアフィッシングもミッション構成も、そういったゲームっぽい部分はさして問題ではない」と感じるかもしれない。

しかし、CS機よりマシンパワーに勝ることの多いPCゲームとしては、グラフィックも一歩遅れをとっているかな、という印象だ。CS機としては標準的なレベルのグラフィックに達しているし、魚たちの動き、銛の挙動もなんら怪しいところはない。インディーズゲームという観点から見れば優れたほうだという見方もできるだろう。それでも私はPC向けにリリースされており、グラフィックの質が大きく影響するようなゲームであるなら、それこそもっと気合を入れたものが提供されてしかるべきだと思うのだ。

オプション画面の画質設定はLOWとNORMALのみ。
HIGHがあるなら最初から実装するべきだろう
おそらくCS機への移植前提で開発されており、結果としてスポイルされている部分があるんじゃないか、とは思うが、それではPCでゲームする人は納得しないはずだ。私の環境*3でも1920*1080の画質すべて最高設定(NORMAL)、SSAO ONで動作も安定しているし、エンジン自体はまだまだポテンシャルあるんじゃないの、というのが率直な感想(というか希望である)。

*3 ■OS: Windows Vista 32bit SP2 ■CPU: Core 2 Quad Q6700 2.66GHz ■メモリ: 4GB ■VGA: HD5850

念を押しておくと、海の景観が綺麗に見えないわけではない。ちゃんと美しい景色を楽しめる。スクリーンショットを撮影しようとしてちょっとプレイしたら「意外と綺麗じゃないか」と思ったほどだ。ただもうひと頑張りしてほしかったね、ということ。以下にいくつかスクリーンショットを掲載しておく。





本当はもっと見栄えのよいスポットがあるのだが、NEW GAMEで始めるとFREE MODEも初期状態に戻るらしく、鮫がうろつく沈没船とか海底洞窟とか、(海上の風景だけど)灯台とかの写真は撮影できなかった。



今後のアップデートに期待か……?

本作は現在、未実装のコンテンツがいくつかあり、Facebook上でフリーアップデートで対応すると明言されているので、今後のアップデート次第でもっと魅力的なゲームとなる可能性があることも一応付け加えておく。

TROPHY ROOM。捕まえた魚のサイズや数などを記録できるみたい
DIVING GEAR。プレイヤーやスピアガンの性能を変更できるようだ


売り方について

『Depth Hunter』は作品そのものよりもその売り方があまり好ましくない、と思っているので言及しておく。

前述のように本作は公式サイトとDesuraで販売を行なっている。このうち、Desuraでは頻繁にセールが行われており、30%~50%OFFをウロウロしている。というか頻繁というレベルではなくて、何かと理由をつけて常時セールが行われている*4。安く入手できるのは嬉しいけれども、あまり上手いやり方ではないと思う(気分的な問題ではあるが)。

同社の手がけた『Deep Black』も同様の手法で売られているので、両作品が気になる人は急ぎでないならちょっと待って納得できる価格で購入するのがいいだろう。

*4 執筆中の現段階では40%OFF >>http://www.desura.com/games/depth-hunter

総括 

海底散歩、スピアフィッシング、トレジャーハント。いずれを楽しむにしても『Depth Hunter』はやや物足りない作品だ。ゲーム性のアンバランスさと全体を覆う単調さが、プレイヤーの充実したダイバーライフを許さないのだ。PCというプラットフォームを選んでおきながら、高品質とは言いがたい出来であるのも問題であろう(必ずしも低品質なわけではない、念のため)。

価格相応という見方もできるが、それも値引き価格での話。幸か不幸かDesuraでは常時セールに並んでいるので、気に入った価格なら購入してもよいだろう。できることなら購入前にデモ版をプレイを薦める。


Biartの次回作について

現在、Biartは『JURASSIC MONSTERS』というタイトルを開発しているようだ。2012年予定でコンセプトアート1枚しか明らかになっていないのでなんとも言えないが、タイトルから察するに海中で恐竜めいたモンスターと戦うようなアクション性の強いものになると思われる。

鮫以外に、クラーケン、リバイアサンといった名前も上がっているが果たして……
『Depth Hunter』は期待はずれ(間違って購入してしまったというのも大きい)に終わったが、注目していきたい。

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